2006年09月30日

東野圭吾『赤い指』

赤い指
東野 圭吾著

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 ニュースに登場するような幼女殺害事件、その加害者の親を描くことで、家族のあり方を見つめ直す物語。これはなかなかすごいです。

 平凡といえば平凡な家庭の問題を抱えた昭夫は、優柔不断で問題にも見て見ぬ振りばかり。嫁姑のトラブルも、妻がヒステリックなところがあって、姑嫌いもちょっとふつうじゃないくらい。今では一緒に食事もしていない。最近その昭夫の母も認知症らしき言動を見せている。息子は引きこもって、何をやっているのかよく分からない。

 冒頭で昭夫は帰りたくないばっかりに、必要もないのにサービス残業をして時間をつぶしているありさま。妻からの電話で帰ると、庭に女の子の死体があって、息子が殺してしまったという。妻は自首させることには強く反対し、当の息子は自分がやったことに目をつぶって部屋でゲームをしてたりする。昭夫もはじめは自首以外に選択肢はないと言っているのに、家族を守るためというより、問題から逃げるために、死体の遺棄をすることに決める。当然のことながら、捜査の手が延びてくると逃げ切れるわけもなく、そうなると、さらなる地獄への道に足を踏み入れる。

 私は、悪夢が現実になった前半の描き方にリアルさを感じて目が離せませんでした。ただ、最後の展開をどの程度、説得力を感じさせていると見るかが評価の分かれ目かな、という気がします。

 今回、加賀恭一郎の個人的な問題が出てきて、親子の話としてストーリーに絡んできます。その加賀と組む松宮は、加賀といとこですが、経験も浅く、いかにも思慮が足りない描かれ方で、また私的なことで加賀に不満を抱いていて、非常にウザかった。

 
posted by 行き先不詳 at 13:07| Comment(0) | TrackBack(4) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「まぼろし」



 フランソワ・オゾン監督の2001年の作品。

 別荘に過ごしにきた夫婦。浜辺で本を読んでいると、夫が泳ぎに行ったまま帰ってこない。溺れたのかと心配するが、捜してもらっても見つからない。妻は別荘から帰ってからも、夫が失踪などしていないかのような発言をして周囲を戸惑わせる。夫の幻覚も出現したりとか、ある男との「浮気」をしたりとか、夫がいなくなたあとの妻の精神の揺れが静かに描かれる。

 私は、夫がいなくなったときに、失踪か、そもそも夫なんていなかった、的な展開も予想しましたが、これはサスペンスでもないし、幻想的な雰囲気はあるとはいえ「世にも奇妙な物語」のような話ではありません。ただ、妻の真意というか、どのように捉えているのかを推し量るようにして注視するようなかんじでした。ラストシーンも美しく、キマッてるなあ、と思いました。

 印象的なのは、男とベッドを共にしていたときに、笑い出して「軽い」と言い出すところ。いなくなった夫は重めな体型だったわけですけど、なんかすごいシーンです。
posted by 行き先不詳 at 12:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月29日

「アジアの女」

 新国立劇場ではじまった、「アジアの女」。初日に行ってまいりました。作・演出は長塚圭史、出演は富田靖子、近藤芳正、菅原永二、峯村リエ、岩松 了。

 東京が震災に遭い壊滅的な被害を被ったという状況で、ふたりの兄妹(近藤芳正と富田靖子)が半壊した自宅で暮らしている。そこは避難勧告を受けている今も危険な場所なので、ほかには誰もいない。妹は震災前から心を病んでいたらしく、芽が出そうもない畑に水をやっていたりするなど、回復しているかあやしい様子。そこへ、兄の編集者時代に担当をしていた作家(岩松了)が怒りながら訪ねてきて、そこへ居座ってしまう。作家は書くことができない、というか単純に才能がない、想像力をもってないようなのだが、編集者といっしょにまた作品を作り上げたいと思っている。それから、警察官(菅原永ニ)が配給の食糧や水を届けにやってきていて、妹に思いを寄せている。そして、妹はボランティアの手配をしている女(峯村リエ)と出会い、どうやら体を売る仕事を世話されるような話をしている。

 そんな彼らが、震災によってリセットされた状態で、現実を乗り越えることができずにいるところと未来に希望をもって進もうとするところが静かに描かれる、というかんじになってます。

 岩松了の役が面白くて、最初は厚かましいイヤなかんじの人として登場し、なぜ怒っているのか、なぜ危険なところへわざわざやってくるのかとか、謎なところがありつつ、笑いを引き起こす中心人物にもなってます。震災後というときにもかかわらず、才能もないのを自覚しているだろうに、腹をすかせながら、それでも書きたいと執着心をもっているのです。
posted by 行き先不詳 at 01:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月28日

ヨーロッパ企画「ブルーバーズ・ブリーダーズ」

 映画「サマータイムマシン・ブルース」がヨーロッパ企画の舞台化だということを知って機会があればぜひヨーロッパ企画の舞台を見てみたいと思っていましたが、今回それが実現しました。ザ・スズナリでの公演です。

 この「ブルーバーズ・ブリーダーズ」は、青い鳥を探す人たちが出てくるドタバタなコメディということになるかと思います。青い鳥はチルチルミチルのあの青い鳥で、一応しあわせの青い鳥が実在する世界ということになるわけです。その青い鳥を探す探知機とか呼び寄せる装置を使って山で捕まえようとする、という話ではあります。といっても、ストーリーがどうこうという感じではないですけど。1時間強の短めの上演時間になってます。

 ドタバタと書きましたが、なんかドタドタとかバタバタとか言ったほうが似合う気がします。登場する11人がにぎやかに同時にしゃべりっぱなしみたいな、ずっとワイワイガヤガヤという具合で、私はこれが新鮮に感じられました。そして、そういう中で小さなアクシデントが起きたりして笑いを引き出しています。ちょっと目を離したところで小さな仕掛けが準備されていますが、なによりその細かい段取りに感心します。そして笑えます。見ていると楽しくなってきます。

 次の公演もぜひ見てみたい、と思ったのでした。

posted by 行き先不詳 at 00:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月25日

『小博打のススメ』


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 プロの将棋指しである著者が、タイトルのとおり「小博打」を薦めている本です。「小博打」といってるのは、少額で自制心をもった健全な博打を指しているわけです。

 麻雀とかサイコロ博打、カード、おいちょかぶ、カジノなんかの解説とテクニックについて書かれています。ゲーム性の強いものよりも、偶然性が高くて心理的な駆け引きがあるものが面白いんだと、それを少額でも金を賭けることによって、より面白くなるんだと説いてます。

 私は、ポーカーと手本引きの項に興味をもって読んで、確かに面白そうだと思いました。「手本引き」というのは"その筋のひと御用達"の賭け事らしく、薦めておきながら、これをするなら、知らない人間は仲間に入れず、部屋にノックがあったらドア越しに顔を確認し、万が一警察だったら場の金をすべて小さなかごに入れる、などという注意をしていて、なんか怖いです。ルールはシンプルですが、たしかに心理戦そのものです。気になった方は読んでみるなり、各自お調べください。

 個人的には、プロ棋士ならではの戦術的な考え方を、もっとたくさん読みたかったので、若干もの足りなさを感じました。

 
posted by 行き先不詳 at 21:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月24日

『文学賞メッタ斬り! リターンズ』

文学賞メッタ斬り!リターンズ
大森 望著 / 豊崎 由美著

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 『文学賞メッタ斬り!』の第2弾で、大森望と豊崎由美のふたりが文学賞を巡って言いたい放題、みたいな本です。

 内容は、島田雅彦を加えての公開トークショー(最初のほうに出てくる、芥川賞の選考料が1回100万円を毎年2回、という俗っぽい話題に一番反応しましたが)、04〜06の芥川賞直木賞を中心とした選評の批評、30歳以下の作家の有望株の品評(『ナラタージュ』の評価がそこまで低いか、と驚く)、Z文学賞と題して芥川賞と同じような形式で選考会をやってみるという企画(これが一番面白くて、もっとやってほしい)、04上半期〜06上半期の芥川賞直木賞の事前予想、文学賞を受賞した作品でワールドカップをやってみるという企画(これはなくてもよかった)、最後の付録として04年から06年の文学賞受賞作品を点数で評価、といったかんじです。

 私は結構笑いながら読みましたが、それ以上に、読みたいのに読んでない本があまりに多いことを改めて意識させられました。
posted by 行き先不詳 at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

やっと連ドラも見終わって

 実際は、昨日には見終わってはいたんですけど、かぜを引いて書くこともできなかったもんで。

 今回は最後まで見たのは、「サプリ」「結婚できない男」「下北サンデーズ」「タイヨウのうた」「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」の5本です。このうち最終回の時間延長は「結婚できない男」と「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」ですし、視聴率も高かったようですが、「下北サンデーズ」は打ち切りのかっこうでしたから、そういう点では2勝1敗2分け(2分けは甘いかもしれませんが)。
 ん〜、「下北サンデーズ」はそんなにつまらなかったんでしょうか。私にはそんなことはなく、けっこう楽しみにしておりました。もっとはじけてほしかったですが。小劇場になじみのない人には興味がわかなかった、とかであれば、深夜の枠のほうが似合うドラマだったかもしれないですね。

 今回一番の楽しみは「結婚できない男」で、なんといっても桑野信介(HPに桑野信介名言集があります)であり阿部寛の演技ですが、気になってたのは夏川結衣の演技が妙にシリアスだったことがあって(とくに、お好み焼き屋で「あなたはしょうがない人です」とか)、それによって生まれる緊張感が、前振りなのか、桑野のキャラクターを浮き立たせるためなのか、とにかく強い印象が残ってます。
 物語的にはあまりドラマチックではないわけですが、早坂(夏川結衣)の父親(竜雷太)が登場しても父の代弁をしてみるとか、早坂がお見合いをしても桑野は無反応とか、いかにもな展開を逆に利用しているところも面白かったです。

 

 
posted by 行き先不詳 at 20:57| Comment(0) | TrackBack(3) | TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月21日

「蒲田行進曲〜城崎非情編〜」

 昨日青山劇場で見てきました。
 個人的には、青山劇場タイプというかんじより、紀伊國屋ホールとかのほうがしっくりくるような気もします。さらにどうでもいいですが、今回もジャニーズの人が出てるせいか、そんなかんじの客層のようにも見えました。

 人気スターの銀ちゃん(錦織一清)、銀ちゃんを慕う大部屋俳優のヤス(風間俊介)、銀ちゃんの子どもを身ごもりながらヤスと結婚させられる小夏(黒谷友香)、銀ちゃんのライバルで歌舞伎界の御曹司中村屋(佐藤アツヒロ)らの中で、罵倒、哀願、敬慕などいろんな感情の噴出が目まぐるしい愛憎劇ですが、とりわけヤスを演じる風間俊介の印象はかなり強力です。前回の公演での草なぎ剛がかなり評判だったようですが、私は残念ながら見ておりませんので、比較のしようはありませんが、たいへんな役ではあります。

 
posted by 行き先不詳 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(3) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月19日

「狼たちの午後」



 シドニー・ルメット監督、アル・パチーノ主演の1975年の作品とのことで、30年も経ってるわけですね。アル・パチーノはこの前年に「ゴッド・ファーザーPARTU」に主演しています。


 銀行強盗に押し入った3人ですが、ひとりが怖気づいてしまうとか、金があんまりなかったとか、気が付いたら警察に包囲されてたとか、そのほか行き当たりばったりな行動で、まるでコメディであってもおかしくないようなありさま。しかも、妙に人質らが協力的なところがあったり。

 プランがすっかり崩れてしまったわけですが、人質もいるのでとりあえず立てこもって、チャンスを待ちます。強盗のひとりソニー(アル・パチーノ)は、警察との交渉などのために銀行の前に何度も顔を出しますが、テレビ中継もされているため、すっかりヒーロー状態に。そして最後に、海外脱出を図るため、人質とともに銀行を出て、緊迫した雰囲気の中、空港へ向かうのですが果たして…、みたいなかんじ。

 すぐに警察に包囲されたので、2時間も話がもつのかと思いましたが、アル・パチーノの演技とシドニー・ルメットの演出に「セルピコ」同様、リアルでしかもリアルさを超えたパワーを感じました。
posted by 行き先不詳 at 22:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月17日

「ダーク・ウォーター」



 それほど見たいとは思ってなかったのですが、「ビハインド・ザ・サン」を見たときに、「セントラル・ステーション」「モーターサイクル・ダイアリーズ」の監督が「ダーク・ウォーター」を撮ったということで、期待感をもって見たわけです。が、どうしたことでしょう。これは。

 鈴木光司の『仄暗い水の底から』の原作も、中田秀夫による映画化のほうも、見てないんですが、イメージとしてホラーなのかと思ってました。少なくともこのリメイク版はホラーとしては楽しめませんでした。

 離婚調停中の母が娘と陰気な感じのするアパートに越してくると、天井の黒いシミから水漏れがひどいとか、娘がいもしない子を友達にしてるとか、そのほかにも身の回りに気持ちの悪いことが続発するわけですが、これを見てても、怖さや気味が悪いというよりは、「こりゃあ困るよなあ、生活する上で」という感じです。かといって、ホラーでないものとしても、とくに面白さが変わるというわけでもなかったです。

 ただ、物語をどう決着させるかについては、感心しました。原作通りなのかもしれませんが。どちらにしても、最後の娘の反応は哀しさを超越してます。
posted by 行き先不詳 at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月15日

小林信彦『うらなり』

うらなり
小林 信彦著

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 夏目漱石『坊っちゃん』に出てくる「うらなり」、マドンナの言わば婚約者同然の間柄だったのに、赤シャツらの策謀によって、転勤する羽目になってしまった男。あまり存在感のない「うらなり」ですが、『坊っちゃん』のストーリーからすると「うらなり」こそが物語の中心であるはずで、とくに主人公の男は全くこの話に無関係の立場にも関わらず、大騒動を引き起こして去っていく。こういう一連の出来事を「うらなり」はどう思っていただろうか?

 そんな発想から書かれた小説がこの作品で、「うらなり」の視点からの『坊っちゃん』、また、その後の人生をどう送ったのかが描かれます。小説じたいも十分に面白いのですが、「創作ノート」が載っていて、この小説を書く経緯や苦労した点などが書いてありまして、これがたいへんに興味深かったです。私は、本編を読む前に1回さらっと目を通したんですが、たとえば、『坊っちゃん』には主人公の男の名前が書いてないという問題があるというのを見て、「あぁ、そういえば、なかったかも」と驚き、それがどう解決しているかなど、読んでいるときの楽しみも二重になっておりました。とにかく、この発想で勝負あった作品でした。
posted by 行き先不詳 at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「獏のゆりかご」

 紀伊國屋ホールで上演中の「獏のゆりかご」に行ってまいりました。作・演出の青木豪という人を知らなかったもんで、高橋克実・段田安則・マギー・小松和重・池谷のぶえ、という顔ぶれに魅力を感じたというところ(杉田かおる、という名前は私に限って言えば、マイナスに働きました、正直なところ)。ほかに明星真由美・安田顕の8人が出演で、1時間半強のそれほど長くない作品でした。

 舞台は動物園。市営らしく職員は公務員なんですが、客の入りもよくなくすっかり古びてしまっているので市の方針としては廃園もありそうな状況。その動物園の副園長(高橋克実)と飼育員たち(杉田かおる・マギー・小松和重)が働いている中、常連のヘンな客がいて、ちょっとした騒動があったりする。そこに、カメラマンらしき男(段田安則)が現れ、どうやら何か裏がありそうな…。

 タイトルに獏が出てくるように、この動物園の一番の人気が獏のユメゾーで、冒頭のシーンでも、そのユメゾーの誕生日を祝うイベントの準備をしていて、獏の着ぐるみが出てきたりします。

 ヘンな人だとか、変わった癖の人とかの絡みがおかしくて、ギャグも含めて爆笑ではないんですが後を引きます。実際思い出し笑いしましたし。

 そして、登場人物たちの裏にある事情や思いが、会話などから明らかになり、職場内の恋愛模様もありながら、どうやって生きていくか決意を固めるような展開です。
 好感のもてる芝居で、なかなかよかったです。
posted by 行き先不詳 at 00:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月14日

「オレステス」

 先週からシアターコクーンではじまった「オレステス」を見てきました。ギリシア悲劇にはあまりなじみがなく、どちらかというと蜷川幸雄と藤原竜也の組み合わせに引かれたというかんじです。ハムレットの印象はいまだに強力です。

 母親に父親を殺され、その仇を討ったことで母親殺しとなったオレステス(藤原竜也)。その罪のためにオレステスを処刑するかどうかが決められようとしています。オレステスは憔悴しきっていて正気と狂気の間をさまよっている状態。それを姉エレクトラ(中嶋朋子)が心配しながら看病をしています。叔父メネラオス(吉田鋼太郎)に助けを求めるも、力になってはくれそうもない。母の父親であるテュンダレオス(瑳川哲朗)はオレステスに向かって罵声を浴びせ、必ずや死刑にさせてやる、と怒りに満ちている。そこへオレステスの親友ピュラデス(北村有起哉)が登場し、死刑を免れようと訴えにいきます。ところが、処刑されることに決まってしまい、オレステス、エレクトラ、ピュラデスの3人は新たな復讐を思いつき、実行に移そうとする。

 蜷川幸雄らしく冒頭が強烈でまずそこで圧倒されます。エレクトラの雨の中での長セリフからテンションが高くて、ただごとならない状況が演じられ、これが最後までずっと続きます。ことばの応酬で成り立っているといえます。

 雨を最初から降らせ、その後もたびたび使っているんですが、雨の音はセリフを聞き取るのに不利に働くので、その分、声をより以上に大きく、しかも雨以外のときから発しないといけないだろうということと(それでも、セリフは聞き落としたところは少なくなかったんですが)、あんなに水に濡れながら演じないといけないというのは消耗しそうだなあ(それに、あんなに薄着でかぜ引くんじゃないかというくらい)、という素朴な感想をもちました。

 しかし、なにより結末です(幕切れとなる演出のほうではなくて)。復讐劇の決着の付け方が、あまりに掟破りで「えぇぇっ〜」とかなり驚かされました。どうやらギリシア悲劇ならではのようですが、これはすごいです。そこに至るまででも、ふつうに共感できるようなドラマでもないし、勧善懲悪とか教訓がどうとかとは次元が違う物語だなあと感じ、理解できないところがあると同時に興味をもちました。
posted by 行き先不詳 at 00:48| Comment(0) | TrackBack(1) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月12日

「アレキサンダー」



 オリバー・ストーンが監督、コリン・ファレルが主演の歴史大作。

 アレクサンドロスなのかアレクサンダーなのかアレキサンダーなのかよくわかりませんが、とにかく名前だけならよく知っている彼の生涯を描いていて、勉強にはなりました。スケールの大きさといい戦闘シーンの迫力なんかもあって、見終わるとそれなりに満足感はありました。

 この中では、母親への疑惑から、自分の王の座についたことの負い目があって、夢を追い続ける原動力になっているようです。それも、東征については、途中から見てるこちらもついていけなくなってくる、夢に共感をもてなくなってくるようになっています。それによって、周りの兵士たちに不評を買うことが自然に見えてくる、そういう流れです。そういうところも含めて、ところどころで、つい信長に重ね合わせて見てしまいました。
posted by 行き先不詳 at 21:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする