2007年10月31日

フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展

 フェルメールの「牛乳を注ぐ女」が文字通り主役の展覧会です。ほかには、同じ17世紀ころのオランダ風俗画や、時代が下ってからの風俗画にいかに影響を与えているかなどを見ることができます。あと、フェルメールの絵に出てくるような昔の楽器なんかも展示されてました。

 まずは、風俗画のほうですが、入り口の解説でも、風俗画といっても日常風景のスナップではないと釘をさしていて、そこを意識しようと思いながら見ましたが、やっぱり、寓意といっても、勤勉だとかくらいしか、なかなか思い浮かばないのが残念なところです。オウムだとか犬や猫なら、なんとなく想像できなくもないのですが。
 でも、ただ見てるだけでも、いろんな物が目に入ったり、その場の状況などに対して疑問だけは出てくるので、そういう面白さはありました。ただ、モチーフにしてもスタイルにしても、似ているところがあって、隣の絵を見て、「これとあれ、違う人が描いたんだ!?」みたいな感想は正直ありました。

 そして、フェルメールのほうですが、もちろんこれ目当てですから、途中で映像だったりパネルで解説をされるのを、少しじらされるように感じながら、真ん中あたりで登場です。ロープで前列と後列に分かれていて、前列は移動しながらの鑑賞、後列では立ち止まりながら見られるというわけです。今日は、平日の昼だったので、あまり混んでなかったのですが、きっと休日はたいへんだろうなあ、という気がしました。
 イメージしてたよりも、小さかったので、本当はもっと近づいて見たかったところもありました。思ったより、色合いがくっきりとしていて、とてもきれいでした(アップの写真がよく載ってるからか、細かいひびの印象が強いもので)。生で見ると、一層神々しさを感じるのでした。見に来てよかった。


 国立新美術館
 12月17日まで
 
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2007年10月29日

吉本佳生『スタバではグランデを買え!』

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 副題に「価格と生活の経済学」とあるように、身の回りのモノやサービスの価格について、主に、取引コストと価格差別をキーワードに解説している、といったところです。なんとなく分かっていたこともあれば、はじめて知ったことも多くあるのですが、どちらにしても、その具体的で分かりやすい多くの実例と、切り口ですっかり啓蒙されたのでした。そして、何よりとても面白い。

 スーパーで安く買えるのに、そのすぐ前にある自販機で同じ商品が売られているときの価格の違いがなぜありえるのかとか、タイトルにもあるように、スターバックスのショートとグランデで量が倍違うのに、値段は280円の商品でも360円の商品でも100円アップになっている価格設定の意味について(ここでは、店側も客側もグランデの方が得するという結論になるのです)、乳幼児の医療費を無料にする施策は実は逆効果だとか、ほかにもいろいろです。

 その中でも、携帯電話の料金プランについてはかなり詳細に述べられているんですが、とりあえず、取引コストと価格差別について最も分かりやすい例となっています。ここで、取引コストは、時間や労力、心理的負担なども含めたコスト。価格差別は、安くないと買わない人には安く売り、高くても買う人にはできるだけ高く売ることを目指した企業側の行動のこと。
 とっかかりの簡単なところをまとめると、料金プランが複雑だと、情報をちゃんと理解するのはかなり面倒だし、自分の使用形態からどのプランが適当かは後で自分でチェックしないといけない、それにプランの変更自体が手間なわけです。つまり取引コストが高い。それでも一番有利なプランを選択するよう調べて行動するような人には料金が安くなり、そういう細かいことは気にしないという人には高いプランが継続される。つまり価格差別が成立するというような話です。


 著者の本は、これまでも何冊か読んでいて、とくに『金融広告を読め』がたいへん素晴らしかったもので、この本に手を伸ばしました。この本が売れているのは、このタイトルによるところも大きいと思うのですが、正直、こういうタイトルの本を最近よくビジネス書で見かけるので、私には必ずしもプラスにはならないのですが、著者の名前でこの本を読んで、本当によかったと思います。
posted by 行き先不詳 at 22:05| Comment(1) | TrackBack(1) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月28日

ひろゆき(西村博之)『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』

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 私は、なんとなく、2ちゃんねるの訴訟の話が中心なのかと思ってましたが、もちろん軽く話題にしてますが、基本的にはインターネット論というかんじ。あとがきにも書いてあるので、口述筆記というより、本当にインタビューに答えて、それを文章化したもののようです。読みやすいっちゃ、読みやすい(ただ、小飼弾との対談は分からない用語が頻出してましたが)。

 印象的なところは、プログラマーとしての視点などから、ウェブ2.0などに対して懐疑的なことを一貫して表明しているところ。
 たとえば、グーグルやインターネットについて、分かりやすいところを引用すると。
 いろいろな方々が、グーグルがすごいとおっしゃってるようですが、僕には、企画・営業力とサーバーメンテナンス以外、すごい部分がわかりません。
 今後インターネット技術では発明は生まれないでしょう。既存のサービスやソフトの名前を変えて出すくらいしかありません。インターネット初期から現在に至るまで、基礎的な技術に関しては、まったく変わっていない。


 梅田望夫『ウェブ進化論』に対する反論のようにも見えるのですが、中に収められている対談で、佐々木俊尚が、梅田望夫は理想論的すぎて、ひろゆきは現実的すぎる。それぞれ、両極端だ、と言っています。ですから、その中間を考えておけば、ちょうどいいということなんでしょうか。

 2ちゃんねるは玉石混淆で石の部分が多いことをどう考えるかというところで、集合知は全体が間違っているかもしれず、集合知でも正しさに到達されるかは保証できない。ヒエラルキー構造がなく、フラットで平等であるからこそ、2ちゃんねるの存在価値があるんだということが結論として受け止められるでしょうか。
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ペンギンプルペイルパイルズ「ゆらめき」

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 台風が接近していることを不安に思いながらも、仕事帰りに吉祥寺シアターへ行ってきました。終演後の天候によっては、帰りの心配もありえましたが、結果としては問題なかったです。

 舞台装置はちょっと印象的で、マンションの一部屋を奥から手前にかけて斜めに切り落としたようになっていて、奥の部屋のほうが壁が高くなってるようなかんじ。
 その部屋に住んでいるのは、進(戸田昌宏)とわたる(坂井真紀)の夫婦なんですが、近くに住む友人らがしょっちゅう部屋にやってきています。
 わたるが休業中になっているスタイリストの仕事に行くと、そこのアシスタントカメラマンから告白を受け、自分には夫がいると断わった。そのことを帰ってから夫や友人らの前で話すと、軽く受け止めるような話であったのが、夫は相手は本当にあきらめたのか不安に思ったりして、この話に深追いをするのです。そこへわたるのケータイに、そのスタッフが電話を掛けてくる…。

 ストーリーの中心は、夫婦の秘密だとか隠し持っている感情のようなところもあるのかもしりませんが、そういうところを離れて、メチャクチャ面白い。かなり好きです。ただ、どこが面白いのはよく分からない。そういう面白さってありますよね。なんの説明にもなってなくてすいません。


 作・演出 倉持裕
 出演 坂井真紀 戸田昌宏 玉置孝匡 ぼくもとさきこ 吉川純広 小林高鹿 近藤智行 内田慈
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2007年10月26日

「ディセント」

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 極限状況を描いたスリラーとして観てたら、途中からホラーになってました。

 洞窟を探検する女性たち。本当は、違う洞窟のはずが、危険をともなわない冒険なんて物足りないという人が仲間にウソをついて、未踏の洞窟に行くことになってしまう。洞窟を進むうち、落盤で退路を断たれ、どこに出口があるのかもよく分からず、言い争いが起こる中、突如、得体の知れない生き物が姿を見せ…。

 その正体不明な生き物が、探検している一行を襲うのですが、言ってみれば地底人なわけで、それが妙に素早い動きをして獰猛な怪物です。私には、洞窟で不安に襲われるスリルのほうが面白くて、後半のホラーテイストは、あまり好みではありません。決してつまらないわけではないですが。
posted by 行き先不詳 at 23:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月24日

垣根涼介『ヒートアイランド』

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 映画化されて、その予告を見ているうちに、読みたくなって、積ん読の山から引っ張りだしてきました。著者の作品では『ワイルド・ソウル』を読んで、すっごく面白かったし、だからこの本を買っておいたんですけど、それ以来、どういうわけか、すっかり遠ざかっておりました。

 渋谷のストリートギャングの話。雅というチームのヘッド、アキとカオルが主人公。ざっくり言うと、力のアキと頭脳のカオルですが、ふたりとも、ある種の倫理観を持っているというか、ちゃんとした考えをもって自己を律していて、ただ乱暴な人とかではないのです。ふたりは、渋谷でファイトパーティを開いて、金を稼いでいます。その稼ぎ方も、警察にもやくざにも言い訳が立つように、また、仲間うちでの利益の分配についても、細心の注意を払ってます。

 そんなふたりですが、仲間がうっかりいざこざを起こしてしまい、プロの強盗だと知らずに、金を奪ってしまいます。それは、非合法のカジノから奪われた金でした。その金を巡って、強盗の仲間たちが取り返そうとするだけでなく、元の持ち主のやくざ、その抗争相手のやくざなどが入り乱れて、これはもう金を返すということでは到底解決できない状況。

 アキとカオルは、起死回生の秘策によって、一挙解決を目指す。そのねらいが果たして、どのような結果をもたらすか、めまぐるしい展開となるのです。


 この作品の最大の魅力は、アキらが危険な綱渡りをするようにしながらも、プロの相手らをまとめてだまそうとしていて、そこにコンゲームの面白さがあるかと思います。そこに至るともう読むのを止めることは困難です。
 果たして彼らがこの後どうするのかと気になりますが、続編はちゃんともう出ているようで楽しみです。

posted by 行き先不詳 at 23:36| Comment(0) | TrackBack(1) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月23日

自転車キンクリートSTORE「ツーアウト」

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 ヘボヘボ草野球チームのベンチ風景をおもしろおかしく見せつつ、人間ドラマが展開されます。

 1回裏からはじまって、ホケッツというチームが守備についています(その後も、暗転後2回裏になってる、というように、ずっと裏だけでつないでいくので、チームメートは出てきません)。で、それを監督とスコアラーがベンチから見ているところが描かれているのですが、そこでのセリフから、かなりのヘボっぷりが窺われ、ほとんどコントの勢い。笑いを誘います。ところが、監督はとくにやる気もなく座っていて、スコアラーが盛んに声をかけている。
 実は、監督の妻が今朝家を出て行ったことがわかります。でも、監督はそんなヘボ草野球の試合を見ているという状況なわけです。その後、監督の会社の部下である女性が現れたり、プロの草野球の助っ人と称する男、なども出てくるのですが、監督の息子も登場します。息子は、母が家出をしたのに、こんなところで何をしてるんだ、と怒りをあらわにしぶつかります。ところが、監督は最初っから敗北主義で優柔不断、ダメなところのある父であり夫なのです。じれったい息子の捨てゼリフにも動くこともない。でも、周りの人たちは、親子でもう一度向かい合うよう説得するのです。

 スコアラーにも過去に失敗をおかしていて、それぞれアクションを起こせずに、うじうじするところが、草野球チームのヘボさとも共通して、“ツーアウト”なんでしょうが、突き放しているのではなくて、そこには温かさがあるのです。いい話でした。

 作・演出 飯島早苗
 出演 樋渡真司 岡田正 太田志津香 鹿野良太 瀧川英次 
 THEATER/TOPSにて
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2007年10月21日

真心一座 身も心も「第二章 流れ姉妹〜ザ・グレートハンティング〜」

 「真心一座 身も心も」は、村岡希美、千葉雅子、河原雅彦、坂田聡の4人による、ユニットで、人情物語をシリーズ化して上演しているんだとか。“目指すは小劇場界の大衆演劇”なんてことばもあったりします。

 で、今回は2年前の旗揚げ公演、第一章『流れ姉妹〜たつことかつこ〜』に続く、第二章『流れ姉妹〜ザ・グレートハンティング〜』が上演されています。劇場は、赤坂RED/THEATERです。

 私は、旗揚げ公演は、気になりつつも、最終的にスルーしてしまって、その続編だということだったので、今回観るかは迷ったんですが、結局観ることに。チラシに、第一章のあらすじが書いてあったのも、ほとんど読まないままで。でも、たぶんそんなに大きな問題はなくて、どういう流れかは分かりましたし、十分面白かったです。

 ふたりの姉妹、たつこ(千葉雅子)とかつこ(村岡希美)。かつこは、大衆演劇の一座を手伝いながら姉をさがしています。たつこは、けんかっ早くて、警察のお世話に。それぞれ、北と南でかなり遠いところにいるのですが、かつこの手伝う一座での人間模様と、たつこが出会った男にほれられる話が交互に進行して、ついにはふたりは同じ土地に流れ着き…。

 スクリーンにキャストの字幕が出たときに、高田聖子と相島一之に“ゲストレイパー”と“ゲストラバー”という見慣れないことばが付されていて、いったい何だろうと思ったら、レイプする人、恋しちゃう人、ということなんですね。しかも、毎回、レイパーとラバーが登場するようで。レイプシーンは、かなりバカバカしくも壮大なクライマックスにもなっていて、笑えました。


 作 千葉雅子
 演出 河原雅彦
 出演 村岡希美 千葉雅子 坂田聡 河原雅彦 高田聖子 相島一之 小林顕作 政岡泰志 伊達暁 信川清順
posted by 行き先不詳 at 20:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月20日

「ディパーテッド」

 「インファナル・アフェア」のリメイクだということで、ことさら比較しようと思わなくても、つい思い出してしまいます。先にそちらを観た人の多くは、「インファナル・アフェア」のほうが好きなんじゃないかと、勝手に想像するのですが、とかいって、私の好みが「インファナル・アフェア」なだけかもしれないですが。

 ただ、「インファナル・アフェア」で、ケリー・チャンの役って、いてもいなくてもいいじゃん、って人に言ったら感情的な反論を受けたことが思い出され、今回、改めて観てみましたが、その感想はとくには変わりませんでした。それが、「ディパーテッド」では、精神科医の役割が大きくなっていて、ドラマの中では不可欠な存在です。

 それから、ギャング映画として違和感のない作品になっていて、また、潜入過程がかなりちゃんと描かれていて、映画としての説得力は増しているのかなと。その分、こちらの方がかなり長くなってますが、別に長過ぎるという感想もなかったです。

 「インファナル・アフェア」を今回観直してみると、最初ほどのインパクトは当然薄まっていたわけで、もしかしたら、観直していくうちに「ディパーテッド」が猛追する可能性もあるかもしれません。
posted by 行き先不詳 at 23:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月18日

毛皮族「おこめ」

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 “毛皮族7周年記念にして、1年3ヶ月ぶりの本公演”となる「おこめ」、本多劇場で上演中です。毛皮族は私には、お初でして、機会があればと思っていて、そういう祝祭的な公演ということで足を運んでみました。

 チラシを見ると「昭和の陰獣と呼ばれた小平義雄の強姦殺人事件をモチーフに綴られていくピカレスクロマン」と書いてあります。改めて読むと、ふ〜ん、そうだったんだ、と思っちゃいます。秋田の農村のある一家の大河ドラマといった趣きですが、父親の家系には狂気を受け継ぐ血が流れています。精神異常、性と暴力が噴出するのです。

 どうも、私にはこれといって魅力を感じなかったところがありました。これが1時間半強で、休憩に入りますが、幕間後にすぐ近くの人が帰ったみたいで、そういう人がいてもありかな、と思っちゃいましたから。私は、そこで帰るほどではなかったですけど。


 それから、休憩をはさんで、「おこめ外伝」になるんですが、こちらも米はからんではいますが、基本的には「007シリーズ」と「スチュワーデス物語」のパロディを絡めたような作品で(これが“黄金のスパイアクションレビュー”なんでしょうか、よくわかりませんが)、かなりバカバカしくて、それなりに笑いました。「スチュワーデス物語」を観てないと「何のこっちゃ」でしょうけど。

 目下、毛皮族の次回の公演に行きたくなるかは、かなり微妙なところです。

 作・演出 江本純子
 出演 江本純子 町田マリー 澤田育子(拙者ムニエル) 米村亮太郎(ポツドール) 金子清文 柿丸美智恵 羽鳥名美子 武田裕子 高田郁恵 高野ゆらこ 延増静美 平野由紀 
posted by 行き先不詳 at 00:44| Comment(0) | TrackBack(1) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月15日

村上春樹『走ることについて語るとき僕の語ること』

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 走ることを中心にして、小説家としてのこれまでや、生き方についてなど、村上春樹が自身のことを語っています。本人はこの本のことを、エッセイというよりはメモワール(個人史)なんだと書いています。

 小説家という職業と走ることについて、こんなふうに書いています。
『発売部数や、文学賞や、批評の良し悪しは達成のひとつの目安になるかもしれないが、本質的な問題とは言えない』
 そこには勝ち負けはなく、自分の中に基準が存在する。それは他人に言い訳を言うことはできても、自分をごまかすことはできないのだと。市民ランナーにとっても、勝ち負けではなく、個人的に何かを達成できたのかどうかが問題で、そこが似ているのだということです。
 個々のタイムも順位も、見かけも、人がどのように評価するかも、すべてあくまで副次的なことでしかない。僕のようなランナーにとってまず重要なことは、ひとつひとつのゴールを自分の脚で確実に走り抜けていくことだ。尽くすべき力は尽くした、耐えるべきは耐えたと、自分なりに納得することである。


 本格的に走るようになったのは、『羊をめぐる冒険』を書き上げたあとのことで、それは体調維持のためだということです(また、当時の作家デビューのころの話もこのときに語られています)。

 小説家として重要な資質とは何かと問われれば、才能が一番なのは当然として、集中力と持続力が必要だと答えるそうです。そして、それらは才能とちがって、後から身につけていくことができる。小説を書くことは、肉体労働に近いものがあるのだとのこと。

 しかし、それにしては、ずいぶん真剣に走っているんだなあ、と予想以上に“ランナー”だということを認識しました。なにしろ、ほとんど毎日10キロとか走ってるし、毎年1回はフルマラソンに出場しているわけで。しかも、トライアスロンまで出ちゃって。

 走ることについても、アテネでの猛烈な暑さの中でのはじめての(ほぼ)42キロマラソン、サロマ湖100キロウルトラマラソンでの完走で何かが変わってしまったこと、身体能力の衰えもそれほどないはずで、手応えのある練習をしてきたのに、本番のレースで思わしい結果が出ないこと、など、まるで走ることに興味のない私ですが、たいへん引きつけられます。

 しかし、何よりも、いかにも深遠なことではないのですが、ささやかな人生の真理をさりげなく語っているところに、もう感動といっていいものを受けました。元々村上春樹のエッセイが好きですが、これはなかなかに特別な位置付けなのかなと思う次第です。
posted by 行き先不詳 at 21:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月14日

「ガンジス河でバタフライ」

 先週(先々週になるのか)の金土と2夜連続で放送されてて、その日の夜までノーチェックでいたら、「あれっ、宮藤官九郎が脚本なんだ」と急遽録画しておいたのでした。

 女性大生の高野てるこは、就職活動中に、自分のアピールポイントがなかったために、思いつきで「ガンジス河でバタフライ」を口にします。それを実行するために、インドへ行くことになるのですが、そこでのカルチャーショックや、ダマされたりするアクシデント、インドの人たちとの交流を通して、たくましく成長する姿を描いてます。

 なんといっても、てるこ役の長澤まさみですが、最初のうちインドを「旅行」している女の子から、すっかり土地に馴染んでいくところが、すごいです。かなり撮影では苦労があったのではないかと推察いたします。本当に生き生きとしてましたので、その点を強調しておきたい。

 ほかに、現地で出会う日本人に塚本高史と中谷美紀。完全にコメディ仕様な家族
ですが、父母兄にそれぞれ石橋蓮司、竹下景子、荒川良々。

 原作は、たかのてるこの同名の紀行エッセイだとのことです。
 
posted by 行き先不詳 at 21:44| Comment(0) | TrackBack(0) | TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「カオス」

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 タイトルにもなっているわりには、カオス理論については、ほぼ無視していいような気がします。
  銀行強盗による立てこもり事件の犯人が、交渉相手に指名した停職中の刑事が主人公。彼は新人刑事と組んで、現場を指揮しますが、そこでは犯人側の罠もあって、すっかり逃げられてしまう。しかし、現金は手つかずのままでした。犯人の真の狙いは何か。事件を追っていくうちに、意外な真相が現れる、というサスペンスです。

 主演の停職中だった刑事役が、ジェイソン・ステイサム(「トランスポーター」シリーズに出てるらしいですが、私は「ロック、ストック&トゥ・スモーキング・バレルズ」の印象が強いです)。相方の新人刑事がライアン・フィリップ(「父親たちの星条旗」に出てました)。


 サスペンスとして観てる分には、面白かったんですが、ミステリー的なところもあて、伏線、ストーリーの流れからいって、途中から○○が○○なんじゃないのかなあ、と思いながら観てたら、やっぱりそうでした。決して、すべてお見通しというかんじではなかったんですが、ちょっと残念に思えました。
posted by 行き先不詳 at 21:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

本谷有希子『ぜつぼう』

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 一時的なブームが去って、あっという間に落ち目となった若手芸人(明らかに猿岩石を連想させる設定です)が主人公。元々面白い芸を持っているわけでもなく、かといって国民的な有名人となってしまった男は、どこへ行っても嘲笑われて精神的にボロボロになってしまっています。それが、ちょっとしたきっかけで、ホームレスの男の田舎にある実家へ行くことに。行ってみると、空き家のはずのその家には、女が住んでいる。ただ、その村には自分を知らない人たちもいて、そこでやり直すことになるのかなと思いながら読むと、そこにはやはり別の絶望があるのでした。

 本谷有希子の作品を読むのは、これで3作目なんですが、毎回、ある種常軌を逸した人の内面を少し距離を置いて描いているところがあって、引き込まれもすれば、おかしみを感じたりもするのですが、この作品にかぎっては、「今度はこういう人か」というパターンに見えてしまったり、展開に興味を覚えなかったところがあって、そんなに好きな作品ではなかったです。
posted by 行き先不詳 at 20:41| Comment(0) | TrackBack(1) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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