2008年12月31日

桜庭一樹『ファミリーポートレイト』

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 直木賞受賞後初の書き下ろし長篇小説だそうです。『赤朽葉家の伝説』や『私の男』の延長線上にあるような気のする作品ではあります。『私の男』と比べると小説としての完成度は上回っているように思えましたが、圧倒されるような迫力は感じなかったです。

 2部に別れていて、はじめは主人公の少女時代。訳ありの母と子ふたりが逃げ続け、落ち延びた先の町ごとに描かれる雰囲気が違っています。また、母親に虐待を受けながらも自分が母親を慈愛をもって見守るような語られ方。神話的でも幻想的でもあるようなところがよくて、物語の魅力というか魔力があって第1部が好みです。

 第2部では、母との別れの後に、強烈な刻印として残っていることを見つめながら、作家としてどのようにしてもがきながら生まれるのかを描いているといったところです。母との過去と書かざるをえない表現者としての業を超えることで、自分を受け入れるようになる姿でしょうか。
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2008年12月30日

「ホット・ファズ―俺たちスーパーポリスメン―」

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 劇場公開を求める署名運動が起こったとかで話題にもなってたイギリス映画。

 ロンドンのスーパー優秀な警官が凶悪事件の存在しない安全な村へ飛ばされて(あまりに目立って他の人が無能に見えちゃうからという理由で)、行ってみると事故に見せかけたと思しき連続殺人事件が発生します。ところが、同僚らは事故だと取り合わない…。

 これが真相が明らかになってから、突如アクション映画になって、かなりムチャクチャな展開で面白くも笑えました。私は前半のテンポのいいコメディ部分がとくに好きです。数々の映画のお約束を盛り込んでいるとはいっても、マニアックではなく、素直に楽しめました。
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「ダージリン急行」

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 ウェス・アンダーソン監督の奇妙なロードムービー。

 3兄弟がダージリン急行に乗ってインドを旅するのですが、家族の結束を立て直そうというのが目的です。3兄弟がオーウェン・ウィルソンとエイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマンという3人で、大人げないケンカやちぐはぐさなやり取りで、ちゃんとした大人が何をやってるんだ的なヘンさが常につきまとうおかしさがありました。

 ハマりはしませんでしたが、いつかまた観直したらもっと面白がれる予感がしています。
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「どろろ」

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 あんまり観る気はなかったんですけど、先輩が貸してくれたもので。結論的には、観なくてもよかったといったところ。

 物語がどうとか、妻夫木聡と柴咲コウの演技がどうとか以前に、CGの魔物が出てくるたびに、これはどうしたものかと困りました。手塚治虫の原作を読んでいたら、違った感想だったのか。とにかく、この魔物を前にどんなアクションをされても、醒めたままでした。

 監督の塩田明彦といえば、私には今でも「害虫」のイメージなんですけど(「黄泉がえり」を観てないもんで)、とても同じ監督の手になるものとは思えなず、ちょっと驚きました。
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2008年12月29日

「トンスラ」終

 温水洋一と吉高由里子が主演の深夜ドラマでした。書けなくなった人気若手作家・柏葉ミカ(吉高由里子)とダメ編集者・藪田秀彦(温水洋一)の12日間は、いろんな事件や騒動を巻き込んで、ブラックでクレイジーかつスラップスティックなドラマでありました。

 ダメ編集者の温水洋一はダメっぷりが板についていて言うことないですけど、それ以上に吉高由里子のSキャラぶりが素晴らしかったです。生き生きとしていて、不思議と不快にならないんですよね。メーキングでは、本気で驚いてたり、怒ってたりしてるのがおかしかった。

 深夜とはいえ、放送時間がまちまちで何度か録画を失敗しましたが、なぜかウェブ上で全編動画配信されていて、ちゃんと見ることができたのは助かりました。

 最終話で、書けるか書けないかの結論が出るのかと思ったら、第3の方向性だったので、それはそれでいいとしても、中途半端な終わり方のように思えてしまった、というか、今後の柏葉ミカが気になります。
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「真夜中の弥次さん喜多さん」

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 クドカン初監督作品ということですが、後輩がこんなヒドいのはない、とかってけなしてたので、なかなか観る踏ん切りがつかなかった1本です。観てみれば、確かにこれはダメな人はとことんダメだろうなあという気がしますが、私はダメではなかった。ハマりはしませんでしたが。すっごく好きか、受け付けないかのどちらかになりそうですが、そのどちらでもなかったというかんじ。同じ弥次喜多でも「てれすこ」のほうが私の好みです。方向性が全然違うのは当たり前として。

 私は原作を読もうとして買ったのは覚えてるんですけど、全然読んでないのか途中で挫折したのかさえ、正直記憶になく…。
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「木更津キャッツアイ 日本シリーズ/ワールドシリーズ」

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 本放送時、夢中になって観てたクチなので、当然もっと早くに観たかったんですが、ドラマを観直したいとか思って、そのまま放置してました。再放送は深夜にしょっちゅうやってたので、ある程度はチェックもしてたんですけど、最後まで観直さずじまいではあります。

 という私には、とっても楽しめて最高でした。
 「日本シリーズ」での、最初の30年後のシーンからして、うっちーを渡辺いっけい、アニが岩松了、マスターは渡辺哲、モー子を伊佐山ひろ子、バンビに中尾彬というところが反則的に笑えました。

 「ワールドシリーズ」では、ぶっさんの死から3年という設定で、意外な「その後」になってましたが、後日談ではなく、未来へつながる話にした作品でした。というか、甦っちゃうし。父親(小日向文世)だけに姿が見えないという設定も、笑えましたが、ラストにじんわりとさせられてよかった。


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高野秀行『幻獣ムベンベを追え』

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 早稲田大学の探検部がアフリカ中央部のコンゴへ、幻の怪獣・モケーレ・ムベンベを見つけに行くというノンフィクションです。元本は1989年に出ています。

 先入観として、昔の水曜スペシャル的なものだったり、おふざけ的なノリなのかなと思ってましたが、想像以上に本格的でサヴァイバルだったので、驚きました。行く前のワクワク感とか、現地での苦闘ぶりだとか、ある種のバカバカしさとか、探検部のメンバーや現地で雇うガイドやポーターなどの人間模様などなど、読みどころはたくさんあります。

 途中で著者が、現地のコンゴ人は森と湖を熟知しているのに、なぜムベンベだけは熟知されていないのか、という疑問を抱きます。私は、納得して、そりゃそうだ、いないからだろうけどと思うわけですが、著者は続けて、コンゴ人は知識としてではなく五感を使ってムベンベをどう捉えているのかを知りたいというところに、この人の姿勢が出ていると思います。

 それから、「文庫版あとがき」にコンゴのその後にも触れられていますが、文庫刊行時には未邦訳だった「コンゴ・ジャーニー」が今年、訳出されて、ちょっと話題になってます。
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「石田徹也ー僕たちの自画像―展」練馬区立美術館

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 最終日の昨日、なんとか間に合いました。

 没後出版された『石田徹也遺作集』でちょっと話題になっていた人でしたが、どんな人なのかも全くわからないまま、なんとなく気になっていました。

 1973年生まれで2005年に31歳で亡くなっていて、父親の言葉によると遺作集を出した後に、作品は廃棄する予定だったようなことが書いてあって驚きましたが、ひとごととして考えてみれば、こういう絵が息子の遺品として大量に残っていたら、扱いに困るだろうなとは思います。

 作品はそれぞれインパクトがあって、非現実的なイメージを取り入れて、社会の生きにくさとか孤独、コンプレックスなどが描かれ、息苦しさや痛ましさを感じさせます。あるいは、もう少し社会的なメッセージを含んでいるのかもしれませんが。それからほぼすべての作品に石田徹也本人と思われる(今回、写真を見ることができて、ちゃんとそっくりでした)人物が描かれていて、一種の自画像のようにも読み取ってしまえます。副題の「僕たちの自画像」とは、画家だけに限らず、現代人の普遍的な問題なんだという意味なんでしょう。

 ところが、展示室が2つに別れていて、スペースの関係だけではないと感じさせる作風の変化が出てきます。1999年に転換点があって、それ以前の作品は、ストレートな表現で、その意味を汲み取りながら、観ていくところがありましたが、それ以降になると、よくわからなくなってきます。テイストはあまり変わりませんが、解釈をしようとしてもどこにも行き着かず、居心地の悪さを感じるようなところがありました。

 1999年以降の変化を見ると、作者自身の私生活などをどうしても知りたくなってしまいます。そして、この後どういうふうに変化していったかを知りたくもなるのでした。
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2008年12月27日

「I AM LEGEND」

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 ウィル・スミス主演の本作ですが、「地球最後の男」ほかのタイトルでの原作と2度の映画化を経ている作品なんだとは、観てから知りました。

 人が全然いなくなっていて廃墟と化してるニューヨークに主人公の男と犬1匹がいます。奇跡の治療薬がどうとかの話があってからの3年後という滑り出しで、強力な感染症によって人類がほとんど死滅してしまったようです。

 誰もいない街を犬と歩く日々が深刻な状況にしては一見のどかにさえ映るのですが、当然のことながら完全な孤独があるわけで、これで犬が死んじゃったら生きていけないよとか思っちゃうところです。彼は科学者で、感染症を克服するための実験を繰り返しています。その一方で、日没前に帰宅し窓を完全防備して夜を過ごします。どうやら外では何かが起きていることが窺われるのです。

 このあたりの、世界はどうなってしまっているのかということに思いめぐらせられる手探り感が私は好きです。

 それが、途中からホラーに移行しちゃいます。こっからが好みがかなり別れるのでは。「28日後…」や「ディセント」を想起しましたが、私は嫌いではありません。描き方はもっと生々しくリアルなほうが惹き付けられると思いましたが。
 それから本筋ではありませんが、自家発電をしたり、食料調達をしているようですが、現実的な疑問が常につきまとうのは避けられません。
 
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2008年12月26日

長嶋有『家電製品列伝』

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 書評集です。取り上げられるのは、ほとんどが現代小説で、個々の作品に出てくる家電を俎上にして書評するという試みです。
 ふだん語られることがない切り口というわけですが、著者自身もふだんから注目しているわけでもないようです。しかも、探してみてもあまり家電って描かれることがないようです。実際、私自身も気にしたことがなかったですし。

 ところが、小説にとっての家電というかなり見過ごされそうなところから、作品の本質に迫ったり小説論にもなったりして(一部分を注目する以上のものになっていないものも少なくありませんが)、こういうふうにしてもより深い理解ができるんだという例になってます。とくに、最初の川上弘美『センセイの鞄』の電池でそのことが強く感じられました。
 
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2008年12月25日

「イノセント・ラヴ」終

 結局最後までチェックしましたが、キャラクターといい、ストーリー展開といい、リアリティも説得力も感じませんでした。謎と衝撃につられて観てしまったといったところ。最終回の奇怪さは月9とは思えない絵でした。

 脚本の浅野妙子は、同じく今年のフジテレビのドラマ「ラスト・フレンズ」も手がけていますが、私からすると同じ脚本家でもこうなっちゃうもんなんだなという印象です。

 でも、登場人物としては、美知留(長澤まさみ)―タケル(瑛太)―瑠可(上野樹里)が殉也(北川悠仁)―聖花(内田有紀)―昴(成宮寛貴)と対応していて、宗佑(錦戸亮)と美月(香椎由宇)が似たポジション(ホラーテイスト担当?)になると考えれば納得できます。そうすると、「イノセント・ラヴ」は、佳音(堀北真希)と耀司(福士誠治)の兄妹が異質な要素になってしまって相性が悪かったのでは、というふうにも思えます。両方のドラマで平田満がまるで対極の役回りなのも面白いです。

 このドラマでは周りの人物が殉也に向かっているために、ほかの人の思いは犠牲にならざるを得ないのですが、それにしても聖花と昴の扱いには愛情がないように思えます。
posted by 行き先不詳 at 22:53| Comment(0) | TrackBack(0) | TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「SCANDAL」終

 第1話の最後に突然サスペンスになってから、ドラマをどこへ連れて行っちゃうのかという部分でまずは引き込まれました。バラバラな4人の生き生きしたやり取りのガヤガヤ具合は面白かったですし、その4人の間に友情が少しずつ築かれていくことや、家庭の問題があぶり出され、これからの生き方を新たなものにするきっかけとなったことなど、ドラマとしての面白さというか、全体的なバランスのよさという点で、今期私が観た中では一番だったという気がします。ただ、ミステリ部分の引っ張りに、そこまで持ってかれはしなかったんですけども。

 男優陣が総じて好演していて、とりわけ小日向文世がよかったと感じましたが、加藤虎ノ介はドラマの中で完全に浮いていたと見えました。
posted by 行き先不詳 at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月21日

「ブラッディ・マンデイ」終

 あの終わり方はシーズン2が?っていうことも想像しちゃうくらい、「24」を最後まで意識させる作品でした。

 初回のロシアのシーンが最後に伏線となってもいるところは驚きましたが、あそこはつかみとしてはよかっただけに、その後、ドラマがスケールダウンしていったように思えてなりませんでした。テロの危機が切迫したリアルさを感じなかったのはなぜなのかがよくわかりませんが、ほとんどの緊迫しているはずのシーンでドキドキしなかったです。

 それでも、こういうドラマはもっと作られてほしいと思います。

 それから、ハッキングシーンがかっこよかった。何が起きてるのかも素人目にはわからず、本当にこんなことまでできるのかも判別つきませんが。
posted by 行き先不詳 at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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