2009年02月28日

津村記久子『婚礼、葬礼、その他』

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 昨年7月に刊行された本で、表題作と「冷たい十字路」が収録されてます。

 「婚礼、葬礼、その他」は友人の結婚式に出席をし、披露宴でのスピーチや二次会幹事が控えてる中、突如部長の父親が亡くなって呼び出されるという話。常務は、何か特別な事情でもない限り来なさいというので、結婚が特別な事情に当たるのかどうかと迷いつつ、そちらへ向かうのですが、披露宴での動向も気にかかり、両方の式場でのドタバタチックなおかしさが描かれます。

 召喚、という言葉が出てきますが、突然呼びつけられるときにどっちを優先するかということが、ふだんの社会生活の理不尽な一面を垣間見せてるなあという気がします。


 先に『アレグリアとは仕事はできない』を読んだので、「冷たい十字路」がちょっと「地下鉄の叙事詩」と重なるものを感じましたが、こちらは、ある朝の自転車事故の周辺にいる人たちをそれぞれの視点で描いてて、かすってるような人物相関図ができあがるようなドラマができあがってます。こちらも面白かったです。
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長嶋有『タンノイのエジンバラ』

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 著者2冊目の本で、芥川受賞後第1作となる短篇集です。

 4篇あって、表題作は、とくに交流もなかった隣に住む女の子を急に預けられた男の話で、その女の子との奇妙な一晩が描かれます。何度も劇的な展開を妄想しましたが全くそういうことはなく、ほかの3篇のほうがまだ多少のドラマティックな瞬間があるかなと思います。実家の金庫を盗もうとするとか、旅行中のバルセロナで姉の怒りを買うとか。

 どれも人間関係の現れ方が読みどころに思えますが、「サイドカーに犬」では洋子さんはキャラクターの魅力が勝ってるとすれば、この作品集ではキャラ設定の個性よりは関係性の微妙さが前面に出てるような気がします。

 本筋とは関係ないところですが、
 特に筆まめではない知人たちが、無味乾燥な賀状にならぬようにと添えてある手書きの言葉は、どこか無理をしたようなはしゃぎ方をしている。
の箇所なんて、まさに言葉になってなかったことをうまくすくってるなあという感想です。
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「靖国 YASUKUNI」

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 昨年の上映するしないで話題にもなってたドキュメンタリー映画です。監督は日本在住の中国人、李纓という人です。

 8月15日の靖国神社の光景の異様さが映し出される中で、靖国神社の御神体となる日本刀の刀匠へのインタビューが挟み込まれてるような作りです。

 ふだんテレビ報道なんかでは見えてこない猥雑なワンダーランドぶりが、政治的な立場を越えて、単に見世物的に面白いといったところが見所でしょう。それによって、政治的な窮屈さ自体を嗤うような効果があるかと思います。そういうはみ出し方が新鮮に感じてよかったと思う一方で、特殊な場を抽出すれば、靖国神社でなくとも、何かしら奇妙でヘンでいびつなものが見えるのは当たり前だという気がして、それほど面白さを感じなかったですし、全体的に退屈なところが多かったような気がします。
posted by 行き先不詳 at 20:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

NODA・MAP「パイパー」

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 今週水曜に観てきました。

 火星に移住した人々の千年紀的な物語。千年後の火星にいる姉妹たちを中心に、そこから歴史を遡ったりしながら、どういう歴史を経て、現在の火星や地球がどうなっているのかが描かれます。

 パイパーというのは、人類が火星に移住するに当たって、送られた人工生命的なもののことで、人間の暴力を奪うなんていう設定があったりもする存在。これをコンドルズが演じてて、動きや存在感が世界観を補強します。

 主人公の姉妹を宮沢りえと松たか子が演じてて、それぞれ昨年の「人形の家」と「sisters」が強烈だったんですけども、やはりこの姉妹が素晴らしく、とりわけ宮沢りえの演技にはたいへん惹き付けられました。

 希望と絶望だとか幸福の数値化ということなんかが扱われてますが、私はそこをもっと突き詰めてほしいと感じたところです。

 作・演出 野田秀樹
 主なキャスト 松たか子 宮沢りえ 橋爪功 大倉孝二 北村有起哉 小松和重 田中哲司 佐藤江梨子 コンドルズ 野田秀樹
 シアターコクーンにて
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2009年02月24日

「特別展 妙心寺」東京国立博物館 平成館

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 今週末で終了なので、急に取れた午後の半日休暇を使って行ってきました。

 禅寺の妙心寺の所蔵品がいろいろと展示されてます。その種類の多様さによって歴史と文化が広く紹介される企画となってます。とはいえ、“開山無相大師650年遠諱記念”だそうですが、それが何を意味するのかわからない私ですので(館内に用語解説のプレートが掲げてあるくらいなので、一般的にはそんなもんでしょうけど)、入ってすぐに、猫に小判的な、こりゃあやっちゃったか、という感なきにしもあらず、ではありました。

 名僧たちの書や肖像などには、あまり興味がわかず、ほとんど素通り状態でありました…。最後のほうのセクションで、ようやく、そうそうこれを見にきたんだった、という作品が並んでて、そこでほとんどの時間を使ったようなものです。とりわけ、狩野山雪の老梅図襖が、奇異な造形に強烈な美意識を感じて圧倒されました。
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2009年02月23日

湊かなえ『告白』

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 昨年のミステリーの中でも、指折りの話題作で、年末のミステリーランキングでも上位だったりして、今度の本屋大賞にもちゃんとノミネートされてます。それ以上に、前評判から知る小説の設定が面白そうだったので、それがハードルを上げすぎたようです。私には期待ほどではなかったわけです。

 元々、第1章を短篇として発表したとのことで、それに肉付けしてくようにして連作短篇集として出来上がったようですが、私には第1章がそれほどすごいとは思えませんでした。教師の生徒への言葉に強烈な冷徹さだとか緊迫感、あるいは畏怖を感じなかったですし、最後に取る方法にもあまりピンと来なかったです。

 ただ、そのあとの第2章と第3章は、かなり惹き付けられました。その時点では、この構成はやはり成功しているようだと思いました。ところが、その後の加害者パートに当たる第4章と第5章が、後付けの言い訳がましさというか、伏線を回収することが目的のごとく説明的に語られるように読めてしまいました。エピローグ的な第6章のブラックさ自体は嫌いではないですが、リアルさを感じないので、衝撃を伴わなかったです。

 全体に人の醜悪さが描かれているところが好きなところです。他方で、これで命の大切さを裏の意味でわからせるとか言われてもうなずけませんけど。
posted by 行き先不詳 at 21:43| Comment(0) | TrackBack(2) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

特集ドラマ「お買い物」

 2月14日(土)の夜にNHKで放送してたのを、1週遅れで観ることに。脚本が前田司郎だと知らなければ、観ることはなかったでしょうが、これがまた実に独特なドラマになってました。

 老夫婦(久米明と渡辺美佐子)が田舎から東京へやってくる話。おじいさんが、むかし写真が趣味だったのを思い出し、中古カメラ市にぜひ行きたいというのが発端で、20年ぶりの東京に戸惑ったり、奮発して8万円もするカメラを買っちゃったり、東京へ着いてから孫の家に泊まったり、とかそんなストーリーです。

 メチャクチャゆったりとしたドラマで心地よく、これを1時間15分かけて作ってるところがえらいです。とりわけ、久米明はこのドラマのリズムや空気感を体現していて素晴らしいです。個人的には、孫役の市川実日子が出てからが、さらに好きで、祖父母との接し方とか距離感の見せ方が絶妙で、本当に好きな女優だということを再確認しました。
posted by 行き先不詳 at 21:36| Comment(0) | TrackBack(0) | TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「ビロクシー・ブルース」

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 昨日の昼公演を観てきたんですが、終わってから千秋楽だと気づきました。

 ニール・サイモンの戯曲だとのことですが、どのくらい有名な作品かは知りませんでした。自伝的性格をもってるようで、主人公は作家志望だったりもします。

 ビロクシーにある新兵の訓練場を舞台にした青春群像劇で、観ていて何かの見本のような作品だなと感じました。鬼軍曹からの理不尽な命令を受ける新兵たち、その性格や出身の書き分け。とりわけ、そういう理不尽に抵抗しようとする繊細なエプスタインが印象的で、主人公はそれらに対して傍観者的なスタンスです。

 そのほか、娼婦と寝るためにみんなで連れ添って行ったり、ダンスパーティで出会う女の子との恋と別れがあったり、訓練兵間での諍いが繰り返されたりします。コメディ要素は強くなく、ほろ苦さが残るものでした。戦争に対するメッセージを受け取ることもできるのかもしれませんが、私はあまりそこが気にならなかったです。それよりも、これだけの内容なんだから、もっと何か感じるものがあってもいいと思うんですけど、あんまりグッとくるものがなかったです。

 作 ニール・サイモン
 演出 鐘下辰男
 出演 佐藤隆太 忍成修吾 瀬川亮 中村昌也 尾上寛之 南周平 内田亜希子 西牟田恵 羽場裕一
 パルコ劇場にて
posted by 行き先不詳 at 20:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月22日

真心一座身も心も「流れ姉妹たつことかつこ 獣たちの夜」

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 “小劇場界の大衆演劇”を目指す「真心一座 身も心も」の第3弾。昨日の昼公演を観てきました。

 前回から観ているんですけど、今回は前よりもさらに面白がれました。作品の目指す世界とかお約束だとかが前回よりもわかった上で観てるので、入り込めるというところがあったかと思います。

 今回のゲストレイパーが高橋和也で、純朴な酪農家として登場し、ゲストラバーが中村倫也、窃盗団のボスという役回り。一見、逆じゃないかという設定ですが、だからこそドラマが生まれてるようにも思えます。また、その周りの「がや四人衆」の次から次へと替わっていく変幻自在の端役ぶりが面白すぎます。

 作 千葉雅子
 演出 河原雅彦
 千葉雅子 村岡希美 坂田聡 河原雅彦 小林顕作 政岡泰志 伊達暁 信川清順 高橋和也 中村倫也 木野花 マギー(日替わりのゲストがや)
 本多劇場にて
posted by 行き先不詳 at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月19日

仙川環『逆転ペスカトーレ』

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 イタリアンレストランを舞台にしたミステリーです。著者の作品を読むのはこれがはじめて。医療ミステリーの『感染』などでベストセラーになった人ですから、そっちから読むのが王道でしょうけど、タイトル+カバーに惹かれて手を伸ばしました。

 レストランのシェフが辞めることになってから物語がはじまります。新しくシェフとして雇われる男が作るペスカトーレはただおいしいというのとは違う謎めいた魅力がある、というのが中心となる謎です。といっても、ミステリーというよりは、店を突然手伝う羽目になったオーナー姉妹の妹の成長物語でもあり、レストランのスタッフらの群像劇として読めるのかなと思います。

 ただ、そのいずれの要素でも物足りない印象は否めず、とくにミステリー部分は、最初っからほとんどネタが割れてるため、途中がじれったくなるくらいでして、最後にもっと驚かせてくれないと、この構成はキビシいかなと。それと、レストラン内の人間模様、スタッフのキャラも弱いような気がします。

 それから、おいしそうな料理の描写はこの物語の題材からするとないものねだりかもしれませんが、もう少し食欲を刺激してほしかったところです。
posted by 行き先不詳 at 22:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月17日

「銀色のシーズン」

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 観るか迷ってた作品で、土曜にフジテレビで放送してたので、いい機会だなと。

 スキー場でやりたい放題な3人組と結婚式を挙げるためにやってきた女性の出会いから動き出す青春ストーリー。瑛太と玉山鉄二と青木崇高(ちりとてちんで徒然亭草々をやってた人ですね)がその3人組で、結婚式を控えた女性を田中麗奈が演じてます。

 あまり期待してませんでしたが、思ったより楽しかったです。3人組のバカっぷりが見所のひとつかと思います。このキャラなら、もう少し突き抜けてほしかったところではありますが。

 瑛太が演じるのは、モーグルの元ワールドカップ選手で、町の期待を背負って無理をしたために大怪我をして、それ以来引退状態になっているという設定です。それで町の人が負い目を感じて、迷惑な振る舞いも見逃すというのが、私には理解できない設定でした。
 それから、そういう背景が明らかになってからストーリーの方向が見えすぎるのが、弱点かなと思います。

 監督 羽住英一郎
 
posted by 行き先不詳 at 00:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年02月15日

「ちっちゃなエイヨルフ」

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 本日の昼公演を観てきました。イプセンって言われてもほとんど関心がなかったんですけど、昨年の「人形の家」で機会があればほかのも観てみたいと思ってました。ですから、“タニノクロウが「野鴨」に続き演出”というのもノーマークです。

 登場人物は主に4人。夫婦と夫の妹、その妹に恋をしている男。出番は少ない残りの2人は、夫婦の息子エイヨルフと鼠ばあさん。足の悪い息子が死んでしまうということをきっかけに、これまで隠されていたことなんかが明らかにされ、夫婦の危機がやってくる、という展開です。

 この夫婦と夫の妹の3人をめぐって、秘密や罪深さが語られ、それを引き受けることができるのかという方向に向かうようにも思えましたが、後半、どうしても単調な会話劇のごとく退屈に感じられたところがありました。もっと、迫力を感じたり、深さを感得できてもよさそうなものでしたが。

 それから、気のせいでしょうけど、どうしても前半の勝村政信がふきだしそうなのをこらえてるように見えたのが気になってしかたなかったです。


 作 ヘンリック・イプセン
 上演台本 笹部博司
 演出 タニノクロウ
 出演 勝村政信 とよた真帆 馬渕英俚可 野間口徹 マメ山田 田中冴樹(エイヨルフ役はWキャストのようです) 
 あうるすぽっとにて
posted by 行き先不詳 at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「007 慰めの報酬」

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 シリーズ前作の「カジノ・ロワイヤル」の1時間後からはじまるなんていうから、ちゃんとDVDで復習しておきました。

 一番の感想は、酔った、ということで、座席が前の方ということもありましたが、アクションシーンの近さとカットの切り替えの早さに翻弄されて、ちょっと気持ち悪くなっちゃいました。臨場感を越えて、何が起きてるのかよくわからないくらいのところもあって、これは行き過ぎてるんじゃないかと思います…。ストーリーもテンポが早くて、理解が追いつかないところがところどころあって、ちょっとストレスでした。全部が全部ってわけでもないので、それなりに楽しみましたよ。

 私は、往年の「007」に思い入れもないので、タイトなアクションも悩むボンドも歓迎しちゃうんですが、今回は、気分が悪くなった、ということで。
posted by 行き先不詳 at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「加山又造展」国立新美術館

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 加山又造が亡くなってもうすぐ5年になる今年の回顧展です。一部の作品しか知らなかったので、こんな作品もあるんだと新鮮な驚きがありました。

 華やかでデザイン感覚にあふれて、変わった造形が描かれているイメージをもってて、そこが好きでしたが、そこしか知らなかったということがわかりました。今回の展覧会では第1章「動物たち、あるいは生きる悲しみ」の諸作品にかなり惹かれるものがありました。これらに限らず「〜の影響」というのが少なくないですが、最初っからラスコーの壁画とかキュビズム、シュールレアリスム、ブリューゲルなんて出てきて、そういう影響がはっきりとうなずけるのですが、ただそれに留まらない魅力を感じます。

 ほかでも、裸婦像のエロさとか、水墨画の枯れてなさ、工芸品の多彩さとその展示方法も含めて、はじめて知る加山又造で、前よりも好きになりました。
posted by 行き先不詳 at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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