2009年10月25日

三崎亜記『刻まれない明日』

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 3000人あまりの人が消えてしまった場所をもつ街。そこでは、消えた人たちの痕跡があって、そんな不思議な三崎亜記ワールドなエピソードをつなぎながら、大事な人を失った人たちが未来への希望を見つける話になってます。

 最初の「歩く人」には、歩行技師という人が登場しますが、歩くことで道路という概念を固定化している、という仕事です。もう、いかにも三崎亜記っぽいと感じますが、そういう変わった人とか現象とかが出てきて、連作短篇集のようにして進行していくと、この事件の大元の謎も明らかになる展開です。

 消えた人たちの痕跡ということでいうと、消えた人たちが今はない図書館で借りてるらしく貸出記録だけは更新されていくとか、ラジオ局に消えた人たちから手紙が届いたりします。そういった現象も、しだいに消えていくのです。

 人を想う気持ちに「正解」などあるわけがない。それぞれのやり方で、決して帰ってこない人への想いを昇華させるのだ。
 忘れるためであれ、明日へつなげるためであれ。

 このあたりがこの作品全体のテーマに直結してるところかなという気がします。ただ、私には、個々の短篇に出てくる過去を引きずる登場人物たちが、一歩前へ踏み出すというときに、ほとんど好きな人との出会いという形に持ってってるのがワンパターンに思えました。
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タカハ劇団「モロトフカクテル」

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 「SHAMPOO HAT」がインフルエンザなのか俳優の体調不良が原因で休演となってしまって、何か替わりに観ようかなということで、急遽これを選んでみました。

 タカハ劇団は今回がはじめて。というか、全然予備知識なし。出演者を見ると客演が多いなと思ったら、主宰の高羽彩の個人演劇ユニットなんだとか。本作も再演だとのこと。

 で、結論を言えば、面白くて、観に行って正解だったなという手応えです。

 学生運動の話ですが、現在の学生が立ち上がろうとする話に1960年代後半の学生運動とを絡めて描きます。学生らは闘い方も強い情熱もない中、大学のやり方に納得がいかずに抵抗したいのですが、いろんな思惑や組織の対立に巻き込まれたりして、うまくいきそうにないのですが、かつての伝説の闘争に関わる者からのメッセージも来たりします。

 両方の時代に立ち会っている人物が媒介となって同じ空間をオーバーラップさせて異なるふたつの時間を成立させるという演劇ならではな表現もあったりして、しかもそれが、残酷で哀切きわまりないラストへとつながります。


 ネタバレになっちゃいますが、その人は、現実を簡単に受け入れていいのかと、学生らに苛立ちを覚えます。それは自分の過去に対する後ろめたさからくるものでもあって、それが思わぬ形で復讐されると言えるかと思います。果たして、彼はあの当時どうしていればよかったのかということを考えると、かつて闘ったという世代の自負と、闘わないという今の世代への批判が、またちょっと違った角度から問い直されているようにも感じられました。
 

 作・演出 高羽彩
 出演 広澤草 恩田隆一 奥田ワレタ 石川ユリコ 山口森広 酒巻誉洋 浦井大輔 西地修哉 こいけけいこ 小沢道成 畑中智行 有馬自由
 座・高円寺にて
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「猿ロック」終

 木曜深夜に放送してました。2週か3週でひとつのエピソードという構成で、全13話。終わってから1週間以上経ちます。

 原作のマンガは知らなかったんですけど、街の鍵屋が事件を解決する話だということと、脚本が福田雄一だということで観始めて、録りだめしながらもずっと観てました。

 市原隼人が演じる猿丸、通称サルが鍵を開ける天才で、助けを求められたり、事件に巻き込まれたりするのですが、いつも女の子がらみだったりします。正義感は強いのですが、取っ掛かりはだいたい下心からとかで。エロい妄想とか入ってバカで軽いところが深夜ドラマなかんじでした。

 出演はほかに、芦名星 渡部豪太 高岡蒼甫
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2009年10月24日

劇団☆新感線「蛮幽鬼」

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 先週木曜の夜公演を観ました。

 『モンテ・クリスト伯』の設定とかはよく知らないのですが、それでもはじめのうち、まるで巌窟王な話だなということはわかります。異国への留学生が仲間の裏切りから無実の罪で島流しにされ、裏切った男たちに復讐を誓う、という発端です。

 そこから10年後、同じく幽閉されている謎の男と脱獄することになり、故国へと帰ることになりますが、そこでは裏切った奴らが国の中枢に居座っているというわけです。また、許嫁でもあった女が王妃となっていることにも失望したりするのでした。

 ここまでは全然序盤でして、ここから回りくどく復讐をしていく中で、宮廷の権力闘争や主人公を支える謎の男の正体がわかったりする展開です。その途中でかなりの血が流れ、ほとんどの登場人物が死んじゃいます。復讐譚ではありますが、元々は国を立て直したいというところから出発している話でもあり、最後は希望の再生へとつながるのです。

 最初にあるのは非常にわかりやすい動機ですが、単純に復讐を遂げるといった展開ではなく、復讐の連鎖は思いのほか重くて、ダークなテイストだったのがとてもよかったです。それでも橋本じゅんの軽さが笑いを誘い、客演の堺雅人の飄々としながらも底の見せない謎のキャラクターが印象的です。殺陣の多さは、段取りを覚えるのもたいへんだろうと思わせますが、後半の戦いへ向けて盛り上がりにドライブがかかります。

 作 中島かずき
 演出 いのうえひでのり
 主なキャスト 上川隆也 堺雅人 稲森いずみ 山内圭哉 山本亨 千葉哲也 早乙女太一 橋本じゅん 高田聖子 粟根まこと 
 新橋演舞場にて
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「皇室の名宝 日本美の華 1期」東京国立博物館平成館

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 「天皇陛下御即位20年記念特別展」となっていて,皇室で保護されてきた美術工芸作品から名品の数々が2期に分けて展示されるという企画。

 1期は「永徳、若冲から大観、松園まで」となっていて、11月3日まで。行ったのは先週の木曜のことです。昼頃でしたが、それなりには込んではいるものの、入場制限とかいったレベルでは全然なくて、まずは狙い通りでした。

 私の目当ては完全に「動植綵絵」で、やっと全30幅すべてを観ることができました。一通り観てから、もう一回戻ってくると、改めて新鮮な印象を受けて、見飽きません。もうここで半分方満足してしまったところがあるくらい。

 第1章では、ほかに、「唐獅子図屏風」や円山応挙やら岩佐又兵衛「小栗判官絵巻」などなど。「唐獅子図屏風」は思いのほか大きく、右側の狩野永徳の描いた獅子のほうもただ荒々しいだけでなく、ユーモラスな印象を受けました。

 第2章では工芸作品などで、すごいんでしょうけど、私にはよくわからず、第1章に比べると早足気味で終わっちゃいました。
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2009年10月23日

「ハッピーフライト」

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 矢口史靖監督の昨年の作品で、飛行機に関わる人たちを描いたコメディです。

 一機のことなのに一大プロジェクトのような趣で、飛行機が飛ぶことにこんなにたくさんの人が関わるかということもありますし、ちょっとしたトラブルがあっちこっちで起こるわけです。致命的な事故が起こることがないのは作品のテイストが要請するところですが、ドタバタなところやデフォルメしたところなど、ANAが全面協力していることがエラいと感じさせます。

 中心となるのは、昇進がかかった副操縦士(田辺誠一)や国際線は初となるキャビンアテンダント(綾瀬はるか)になりますが、整備士や管制官、グランドスタッフなども絡む群像劇です。それぞれに見せ場があって、これだけの要素を詰め込んでるのに無理なかんじがなく、素直に楽しめました。
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ジョージ・オーウェル『一九八四年』

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 『1Q84』で再注目された感もあり新訳を手に取りました。読むのは今回がはじめてでしたが、思いのほか面白く、素晴らしいです。

 世界が三分されて戦争状態にあり、主人公の住む世界は情報統制がされた管理社会でもあるし、密告社会でもあります。誰も信用できなず、疑心暗鬼にならざるを得ません。主人公はその情報統制、というより捏造に関わる官僚の末端にいるひとりでありながら、それ故に疑問も感じている男です。

 「自由とは二足す二が四であると言える自由である。その自由が認められるならば、他の自由はすべて後からついてくる」なんてかっこいいんですけど、こんなことを思ってるなんて他の人に知られたら、いつ姿を消すかわからないという、恐ろしい社会なわけです。しかも、そんな人は最初からいなかったことになってたりするのです。

 主人公は第2部では、危険を冒して、恋をしたり反体制運動の組織との接触をします。そのことが、主人公らをどのような場所へ連れて行くのか、第3部の展開が気になりながら、読み進むようになります。ですから、後半がどうなるのかは知らないほうが楽しめます。3部のそれぞれが違った面白さがあって、読み応えも十分です。
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2009年10月12日

「純喫茶磯辺」

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 ダメな父親が喫茶店をやってみるって話です。父と娘それぞれの恋愛模様もはさみつつ、親子の絆がちょっと深くなるってかんじ。

 父子家庭のダメな父親(宮迫博之)が父の遺産を手にして、急に思い立ってノウハウもないのに喫茶店をはじめます。「純喫茶磯辺」なんて店名をつけることにはじまって、センスはからっきしで、客の入りはさっぱりでしたが、バイトのウェイトレス(麻生久美子)のミニスカートのせいもあって、少しは客が来るようになります。高校生の娘(仲里依紗)も反発しながら手伝ったりして。父親はウェイトレスが、娘は客の小説家(和田聰宏)が気になる存在で、それぞれの恋の行方がどうなるか、喫茶店経営はいかなる結果となるか、というふうな方向で進んでいきます。

 基本コメディで、いい加減な父親のふざけた行動がおかしいです。笑いどころを外してる箇所はあるとしても、結構声を上げて笑いました。
 
 麻生久美子の役が、どんな人物なのかという描き方によって、違った話にも転がりうるところで、あれが最適解だったのかは不明ですが、後味は悪くないです。
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「俺たちに明日はないッス」

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 タナダユキ監督の昨年の作品で、“性”春映画なんてあるように、童貞の男子高校生3人を主人公にした性に焦点を当てた青春映画という趣きで、それぞれの男の焦りとか間抜けさ、ほろ苦さが描かれてます。

 個人的には、あんまり面白いとは思いませんでしたが、かといって、つまらないわけでもなく…といったところ。

 3人のうちのひとりは太った男ですが、自分に対して積極的に迫ってきた女の子に対して、体目当てなのかというセリフを男にさせるという狙ったシーンがあって、ギリギリあざとさが勝ってるように思えました。そのほかの設定や展開でも、それはないだろッってところがいくつかあって、作品のテイストがもう少しコメディ寄りだったら、アリかもしれないとも思ったところです。


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青年団リンク ままごと「わが星」

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 青年団リンクとして、本作によって旗揚げとなる「ままごと」。土曜の昼公演に行ってきました。今回行ったきっかけを遡ると、サンプル「通過」のアフタートークで柴幸男が出てたことで存在を知って、作・演出をしていたカニクラの「73&88」で作品をはじめて観たというところです。

 チラシの柴幸男のプロフィールには、
《演劇を「ままごと」のようにより身近に。より豊かに。》をモットーに、演劇の固定概念にとらわれない自由奔放で豊かな表現活動を目標に据え、何気ない日常の機微を丁寧にすくいとる戯曲の下、全編歩き続ける芝居(『あゆみ』)、ラップによるミュージカル(現代口語ミュージカル『御前会議』)、一人芝居をループさせて大家族を演じる(『反復かつ連続』)など、新たな視点から日常を見つめ直し、斬新な演出法を用い、普遍的な世界を描き出す。
 とあって、“歩き続ける”とか“ラップ”という言葉に納得し、そういう作品を作ってるんだと改めて知った次第。で、本作も、音楽をバックに8人の俳優が円周を歩きながら、リズミカルにセリフをしゃべり、団地に住むふつうの少女と宇宙での星の生と死を同時並行的に描いているということになるといったところ。

 私は、音楽を聞いてる感覚で、細かいセリフも聞き落としてたような気がします。この作品の新しさや深さについてはよくわからいまま、制作の意図から外れて、単純に気持ちよくなってました。
 

 出演 青木宏幸 大柿友哉 黒岩三佳 斎藤淳子 永井秀樹 中島佳子 端田新菜 三浦俊輔
 音楽 三浦康嗣(□□□)
 三鷹市芸術文化センター 星のホールにて
posted by 行き先不詳 at 19:55| Comment(0) | TrackBack(1) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月10日

ナイロン100℃「世田谷カフカ 〜フランツ・カフカ「審判」「城」「失踪者」を草案とする〜」

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 カフカをモチーフにして、彼の長篇小説やカフカ自身、出演者自身の世界なんかをコラージュして多層的に構成された作品です。水曜の夜公演を観ました。

 以前、池内紀訳のカフカ小説全集が出たときに、『変身』しか読んだことがない私は、これだッ、と思いながらも読まないまま時間は流れ、次に新書化されたときに、いよいよ買ったのですが、未だ積ん読となっているというありさま。今回はそのことを激しく後悔しました。

 冒頭、村岡希美、水野顕子、廣川三憲の3人が本人として舞台上に出てきて、過去にあった自らのカフカ的な体験を語るところからスタートします。これは、舞台稽古前のディスカッションで実際に出た話のようで、このノンフィクションの部分が後にフィクションとして組み入れられて、メタレベルでの言及や入れ子構造になったりしてます。その上で、『失踪者』『審判』『城』の3作品のほか、短篇小説もいくつか演じられ、しかもカフカ自身が登場する層も出てくるという形でカフカ的な迷宮が表現されています。

 実験的な試みでもあり、非常にアグレッシブで、しかも十分面白いのですが、私は正直、途中何度か、これはいい意味で失敗作になるのではないのか?という危惧もありました。いわゆるまとまりといったものを拒否した作品ですし、ところどころ笑いどころを逃してるとか、ちょっとここは長いなと思うような箇所もあったりしました。そういうはみだしたところがあります。

 とはいっても、後半には逆にもっと長くてもいいとさえ思った私で、それはいくらでも続けられそうな内容だからですし、笑いがもっと多くても作品を損なわないと思ったからです。カフカを題材にするということで、カタルシスを感じるような展開やストーリー性が強調されるようなアプローチは違うということはたいへん理解できます。ですから、わかりやすい面白さとは違うのも当然のことだと受け止めています。

 理想的には、原作を読んで、もう一回観に行くという線なのですが、残念ながら、もうそんな時間はなく…。

 ほとんどのキャストが何役かをもってるのですが、個人的に印象的だったのは、藤田秀世の演じ分けが楽しかったです。


 脚本・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
 出演 三宅弘城 村岡希美 植木夏十 長田奈麻 廣川三憲 新谷真弓 安澤千草 藤田秀世 皆戸麻衣 喜安浩平 吉増裕士 杉山薫 眼鏡太郎 廻飛雄 柚木幹斗 猪岐英人 水野顕子 菊地明香 白石遥 野部友視 田村健太郎 斉木茉奈 田仲祐希 伊与顕二 森田完 中村靖日 横町慶子
 本多劇場にて
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2009年10月05日

「コースト・オブ・ユートピア ユートピアの岸へ」2回目。

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 千秋楽だった昨日の通し公演に行きました。2回目の観劇は予定外でしたが、行けなくなった人から譲り受けたことによります(前回はこちら)。幸い、前回とは逆サイドの座席でした。内容について理解はしやすかったのですが、前回ほどの気合いがなく集中力はちょっと落ちたかなというところです。

 前回との差と言っても、俳優の動きなどでは気づくものがちょっとあったくらい。それよりも、個人的には1回目よりも実感させられたのは、オガリョーフ(石丸幹二)の存在感でした。酩酊ぶりや、哀切を感じさせる演技も惹かれます。前回は、ベリンスキー(池内博之)やスタンケーヴィチ(長谷川博己)のほうの印象が強かったということなんですが、そのふたりは今回も魅力的に映りました。それから主要なキャストの中で唯一、3部でそれぞれ別の役を演じている麻実れいも素晴らしい。バクーニン(勝村政信)の第3部での変貌した姿での登場が意外と後のほうで、よほどインパクトがあったんだと知れました。バクーニンの妹を演じた美波と高橋真唯も印象的です。それから、今回改めて、場面転換の手際のよさには感心しました。

 パンフレットで予告された通り、作者のトム・ストッパードが来てました。上演時間が長い作品ですが、客席には野田秀樹もいましたし、嵐の松本潤とか塩谷瞬、花田紀凱などの顔ぶれも見えました。ほかにもいたでしょうけど、私が気づいたのはそんなところ。検索をしたら、塩谷瞬がブログに何本か書いてました。

 カーテンコールは予想通り、スタンディング・オベーションになりましたが、舞台上は祝祭的な空間となって、また劇場全体で一体感を伴ってもいて、心地よい時間を味わいました。
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2009年10月04日

ハイバイ「て」

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 ハイバイの公演を観るのはこれで2回目。本作は昨年6月に上演された作品の再演です。金曜の夜公演を観てきました。アフタートークのゲストは本広克行監督でした。

 自伝的作品だそうで、祖母の葬儀のシーンから時間が巻き戻って、認知症の祖母の家で久しぶりに家族が一同に会する場面に移ります。家族が衝突する場面が迫力ありますが、それが次男視点から、母親視点に替わって繰り返されることで、全く違った家族像が立ち上がったり、1巡目の伏線を回収したりして笑いを誘う展開です。

 家族の衝突ということでは、ひねくれて突っかかるような発言をする兄や暴力的だった父親との激しい言い争いや、長女が妹にしつこくカラオケを勧める善意からくる押し付けがましさがあったりして、それぞれ感情を動かされます。

 アフタートークで映画「羅生門」という言葉が出て、違った視点から語られる効果について参考にしたところがあるようです。「て」は自伝的作品なわけで、次男は作者自身ですが、母親への取材によって、違った像が見えてきたということから、こういう話になったようです。この構成によって、完全に次男が相対化されて、深みを増しています。

 本当に素晴らしくて、完全にハマりました。

 
 作・演出 岩井秀人
 出演 菅原永二 金子岳憲 永井若葉 坂口辰平 吉田亮 青山麻紀子 上田遥 町田水城 平原テツ 月松亮 大塚秀記 猪股俊明
 池袋芸術劇場小ホール1にて
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2009年10月03日

「空気人形」

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 現在公開中の是枝裕和監督作です。空気人形を演じるのはぺ・ドゥナ。ほかに、板尾創路やARATAなど。原作は、業田良家の短篇コミックなんだとか。

 空気人形ということですが、ただの人形ではなく「性欲処理の代用品」なわけで、私はそうかなぁとは思ったものの、ほぼ予備知識がない状態だったので、冒頭で出てくる使用シーンに「うわっ」とは思いました。きっと引いちゃう人も多いのではないかというところです。

 この空気人形が心をもって、街に出歩きはじめ、いろんな人と出会う中で、レンタルビデオショップで仕事をしはじめたり、そこで恋をしたりもするのですが、それでいて、夜は家に帰って、代用品に戻るという生活が続きます。また、出会う近所の人たちの多くが、病んだ部分を抱えていたり、都会の孤独を体現するようにも見えたりして、いろんな形の空虚さを象徴させているようでもあります。


 空気人形が心をもつことで、人形から人間に入れ替わるのですが、私は、持ち主の秀雄(板尾創路)がはじめて見たときにどんな反応をするんだろうと思って観てました。そしたら、そういう場面は存在しなかった。これにはちょっと驚かされました。秀雄には人形として同じように見えてる設定で、それでいてほかの人には人間として通用するっていうことです。

 ほかにも、バイトをどうやってはじめるようになったのかとか、周りの人は彼女のことをどういう人だと思ってるんだろうとか、どうして家に帰るんだろうとか、そもそも何故心をもったのかとか、いろいろと細かいことが気になってきます。この世界ではこういうルールで動いてるんだな、といったふうに一応理解はしますが、リアルな描かれ方なだけに、釈然としないところがありました。

 ARATAが演じるバイト先の先輩が恋の相手になりますが、空気が抜けた彼女に息を吹き込むことが官能的であるというのもアブノーマルですけど、生っぽい表現にドキッとさせられます。

 
posted by 行き先不詳 at 22:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする