2010年06月23日

「東京裁判三部作 第三部 夢の痂」

tokyosaiban3busaku.jpg


 天皇行幸を素材にして、そこに関わりそうになる人たちの姿を描きながら天皇の戦争責任という問題へ踏み込みます。19日の昼公演を観ました。

 最後となる第三部では、東京裁判そのものが言及されないというところに意表を衝かれました。東京裁判をテーマにしながら出てこないということは、天皇が東京裁判にかけられていないことの裏返しとなっていて、そのことに自然と意識が及びます。その上で、天皇が泊まることになるかもしれないからと予行演習をするのですが、主人公が天皇役をすることになって、だんだんと天皇に成りきっていくのです。そこで核心を突く発言がこぼれるというシーンは強烈な印象を残します。それでいて、そこに軽さやおかしみがあるのも、さすがなところです。

 個人的には、三部作の中では第二部が最も東京裁判の基本的な論点に迫っていて好みですが、それぞれの真正面だけではない角度から照らし出すという性格から今回のように一挙に上演されると一層効果的だと感じました。


 作 井上ひさし
 演出 栗山民也
 出演 角野卓造 藤谷美紀 辻萬長 三田和代 熊谷真実 石田圭祐 神野三鈴 小林隆 福本伸一
 新国立劇場小劇場にて
posted by 行き先不詳 at 20:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂」

princeofpersia.jpg



 人気ゲームの映画化だそうで、古代ペルシャを舞台にしたファンタジー色のある冒険活劇といったところ。

 ストーリーについては、原型となる物語は何だろうと思わせるような既視感のある展開でしたが、狭い空間の中でのアクションが見所となっており、そこはとても楽しめました。敵方の強さはハンパなく、あれに勝つの大変じゃない?とか感じながら。自分以外の世界の時間を巻き戻すという“時間の砂”があまり濫用されなかったところも好感をよかったと思います。
posted by 行き先不詳 at 20:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

道尾秀介『光媒の花』

kohbainohana.jpg


 先頃、山本周五郎章を受賞した作品です。

 連作短篇集といっていいと思いますが、帯には連作群像劇となってました。登場人物がかすりながら、次の一篇の主人公にバトンタッチするような構成です。ミステリ色は薄い、っていうほど薄いとも感じなかったですが、派手なミステリではない印象です。低く落ち着いたトーンで語られ、分け入っていくようにして文章に惹き込まれていきました。
posted by 行き先不詳 at 20:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月22日

FUKAIPRODUCE羽衣「愛死に」

aijini.jpg


 「アンダーグラウンド」に続き12日の夜公演を観ました。
 
 FUKAIPRODUCE羽衣は今回がはじめてでしたが、もしかしたら縁がなかったかもしれません。よさを感得することなく、時間が過ぎていきました。正直なところ、珍しく本気で途中で帰るか迷ったほどです。


 作・演出・音楽 糸井幸之介
 東京芸術劇場小ホール2にて
posted by 行き先不詳 at 21:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

庭劇団ペニノ「アンダーグラウンド」

underground.jpg


 書くのが遅れましたが、12日の昼公演を観ました。
 4年ぶりの再演だとのことですが、そちらは観てもいませんでしたし、内容もよくわかってなくて、手術にジャズ?という漠然とした情報で、行くかどうか結構迷いました。

 ということで、観る前のテキトーなイメージではフリージャズがハイテンションで鳴らされる中で外科手術らしきことが行われるような組み合わせでしたが、それとも違って、外科手術からはみ出す遊びの部分があって、ドタバタな笑いさえ入ってたりします。ジャズの生演奏も効果的な使われ方をしている印象でした。

 はじまる前の、紹介とか段取りからして、いったいこれから何がはじまるんだろうというワクワク感があります。1時間ジャストで心臓摘出手術をするということがゴールになっていますが、目的とかも不明なままで、一旦手術がはじまるとほとんど説明的なところがありません。

 リアルな手術風景を観たことがないわけで、たとえば最初に腹部にメスを入れたところが意外と時間がかかってて、映画やドラマだったら省かれますから、本当はこんな感じなのかなということを思ったりしたところです。生々しさは取り払われているように感じられたので、グロテスクな印象はありませんでした。

 もっと違った演出がありそうですが、まずは、よくこんなことを思い付くなぁという感想をもちました。


 作・演出 タニノクロウ
 シアタートラムにて
posted by 行き先不詳 at 21:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月13日

「愛を読むひと」

reader.jpg


 日本では昨年公開されたスティーヴン・ダルドリー監督作。原作はベストセラーとなった『朗読者』で、私も読みましたので、最も根本にある謎については知って観てました。ただ、ミステリ的演出ではなくて、人によってわかるタイミングは違うとしても、だんだんと勘付くよう仕向けられています。

 15歳の少年の一夏の恋というには、リアルさを映像で見せつけられて、さらに、ケイト・ウィンスレットの必ずしも美しいと言えない裸体といい、後半の老けっぷりといい素晴らしいかぎりです。あと、裁判シーンでの毅然とした証言ぶりに気圧される迫力があって、個人的には一番惹かれた場面です。

 原作でも感じましたが、人間の尊厳ということがテーマになるとしても、私には秘密を黙り続けることに説得力を感じられないところがあって、マイケルの配慮についてももどかしさを禁じ得ません。ただ、終盤で、「カタルシスの拒絶」ということが浮上して、この問題への誠実さだと受け止められました。
posted by 行き先不詳 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

西村賢太『瘡瘢旅行』

sohanryokoh.jpg


 これが著者5冊目ですが(過去作1234)、今回も、連続大河私小説の一本みたいな感覚で楽しませていただきました。本作が格別どうこうという感想はなくて、例によって例の如く、といったところで、気に入った箇所は随所にあって、どっか引用しようとか思ったらいくらでもイケるんですが、あとがきがまたちょっと強烈でしたので、そこを抜粋して引用しておきます。

 「廃疾かかえて」は、当初他誌に持ち込む約で書き上げたものだが、手渡す直前に感情的なことがこじれて、もはやそこに頭を下げる気なぞ消え失せてしまった。
 替わりに採ってくれるかたちとなった『群像』誌も、やはりせんに感情的な問題から出禁を食らい、約二年半の間を無意味に干されてきたが、折よく現編輯部に改めての声かけを貰えたのが渡りに船だった。


 「廃疾かかえて」のほか、表題作と「膿汁の流れ」の3篇が収録されてますが、“掲載誌側から最もゴミ扱いされたものをあえて選んだ”んだとか。やはりこんな私小説(風)を書くだけのことはありそうな面倒くさそうさが頼もしい限りです。
posted by 行き先不詳 at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月12日

「クヒオ大佐」

kuhio.jpg


 昨年公開の吉田大八監督作で、実在の人物がモデルになっている結婚詐欺師を堺雅人が演じています。
 
 ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐(堺雅人)というのが、結婚詐欺師の男が名乗る名前ですが、鼻が高い以外は完全に日本人で、これはダマされないだろッ、っていうような外見です。それでも、弁当屋の社長(松雪泰子)が現にダマされてる風で、それがいかに華麗な手口かと思えば、ちっとも洗練されていない苦笑させられるようなダメさです。観てる間中、滑稽という言葉が体現されていると感じられる間抜けさでした。

 前半はそのヘンさやバカっぽさにユルさがあって楽しく観てました。ほかに、博物館の学芸員(満島ひかり)やクラブのホステス(中村優子)などがクヒオ大佐のターゲットになりますが、それぞれ反応の違いも見所です。途中で、弁当屋の社長の弟(新井浩文)が出てきたあたりから、ストーリーの転がり方が変わってきて、コメディっぽい路線から離れていきます。私は前半のほうが好きだったので、期待と違う方向へ流れていった感想です。

 クヒオ大佐の内面はほとんど描かれず、どういうつもりでやっているのかが見えない、ということは一長一短あるんでしょうけど、私は居心地の悪さを感じました。それと、実在の人物っていうことを前提にされているので、堺雅人の演じている状態がどれくらい、ウソくささに近いのかの加減が測りにくいという気もしました。
posted by 行き先不詳 at 10:53| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月09日

「立川談志一門会」

 7日夜によみうりホールに足を運びました。
 私が、立川談志の姿を拝見するのは久しぶりのことで、「談志まるごと10時間」のときにも書いたんですが、おそらく5年ぶりです。

 体調が復帰したものの声が出にくくなっていて、今回もそのあたりの危惧があったんですが、出番になってイスが2脚用意されたときに、あぁやっぱりそうなのか、という落胆がありました。とはいえ、これはこれで面白かったですが。元フジテレビのアナウンサー・山中秀樹が聞き手にまわってのトークショーという形になってました。チケットを購入済みで観る側のはずだったのに、前夜に依頼を受けたのだとか。さらに途中で立川志らくも加わって、3人でのトークとなりました。

 話題として覚えてるところを軽く拾っておくと、睡眠薬の話、寛永寺に墓を買ったこと、三遊亭圓生襲名争奪戦について、立川談志の名前は誰が継ぐのか(家元自身は立川クリスマスだっていいとかみたいなこと言ったりして)、など。時事ネタで首相交代について話題が及ぶかと思ったら、北朝鮮のアナウンサーはすごいなんて話になって笑えました。

 弱気なセリフが漏れたりもしましたが、ぜひとも本格復帰を期待したい。


 演目は以下のとおり。 
 立川談修 夢の酒
 立川談笑 薄型テレビ算
 立川生志 お見立て
 仲入り 
 松元ヒロ スタンダップコメディ
 立川談志 ジョークあれこれ
 立川談志・山中秀樹 トーク
posted by 行き先不詳 at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月08日

快快「SHIBAHAMA」

shibahama.jpg


 快快(faifai)は今回がはじめて。小指値の頃も観たことはありません。5日昼公演を観ました。

 チラシに「ひさびさの新作はもはや演劇じゃない、2010年わこんなかんじでいくんだぞー」ってあったように、かなり演劇から離れていました。

 落語の芝浜をモチーフにして、換骨奪胎とも違うかもしれませんが、いろんな視点で詰め込まれて、それがショーとかイベントのようなところもあるのが、最も演劇的でないところ。仕事をしない亭主というつながりで、日替わりゲスト(南波一海)がグラビア評論をするところなんか面白かったです。寝てばかりというつながりで、締め落として気絶させたり、それをスタンガンで意識を戻させるのは、ちょっとひきましたけど。

 こういう個々の小企画がかなりあって、面白いものもあれば、それで終わり?的なものもあったりしました。どの公演に行くかでかなり違ってそうな気がします。まだ完成されてない感があり過ぎるかなと。あと、壁面に映した画像が見えにくかったのが不満な点でした。

 個人的な好みでは、クラブっぽさをもっと前面に出しちゃうとか、客席を取り囲む四方の壁全面に映す映像を観客をトリップさせるくらいに浴びせるとか、音楽の使い方にしてももっと快感にもってくとか、そんな感じです。それはそれで全く違うものになっちゃいますけど。


 東京芸術劇場小ホール1にて
posted by 行き先不詳 at 20:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月07日

「南極料理人」

nankyokuryorinin.jpg


 これ、かなり好きなタイプの映画です。昨年、かなり好評でしたが、評価がどうこう以上に、好きかどうかで、大好きな作品でありました。

 南極大陸沿岸部にある昭和基地よりもさらに奥地にある「ドームふじ基地」。そこで1年にわたり研究をする観測隊の日々を描きます。

 そのうちのひとりが堺雅人が演じる料理人。毎日、みんなの食事を作るのが仕事。缶詰や冷凍された食材の在庫から腕をふるいます。そこは、ペンギンもアザラシもウィルスさえもいない、なんて言ってるように、とにかく何もない場所。食べることの楽しみが、かなり大きいのです。

 日本から遠く離れて、家族や恋人とも会えない1年間。それでも結構楽しそうに見えるのんびりとした時間が流れてます。小さな空間での共同生活ですから、当然のように人間関係でぎくしゃくしたりもするのですが、殺伐とした雰囲気にはならず、コメディタッチで描かれていきます。大きな起伏がある物語ではありませんが、極めて非日常的な場所での日常が、とても面白かったです。


 脚本・監督 沖田修一
 主なキャスト 堺雅人 生瀬勝久 きたろう 高良健吾 豊原功補
 
posted by 行き先不詳 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月06日

誉田哲也『主よ、永遠の休息を』

recquiem.jpg


 著者の警察小説が好きな人は、こちらもお気に召すかと。

 通信社の記者とコンビニのバイトをしている女性の視点で交互に語られます。この記者は、平均点の仕事をめざすなんて言ったりしてて、情熱を傾けるとか、使命感に燃えるようなキャラではありません。そんなところが等身大な設定ですが、彼がコンビニ強盗に出くわしたところが、すべてのきっかけでした。

 コンビニ強盗の犯人逮捕に協力した人のひとりに取材すると、暴力団の事務所が襲撃されたはずだという情報提供を受けます。ちょっとこれがうさんくさい。それでも、主人公が事情を探っていくと、かつて話題になった幼女誘拐殺人事件に辿り着くのです。

 一方で、コンビニ店員の過去に忌まわしい記憶が漏れ出してくるようで、そのおぞましさを感じさせるリアルさが恐ろしくもあり、惹き込まれるものがあります。

 はじめのうち、記者クラブでの仕事ぶりなどが詳しく語られる前半から、壮絶な終盤に向けてテンションがだんだんと切り上がる展開がスゴすぎます。
posted by 行き先不詳 at 21:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジェットラグプロデュース「幸せを踏みにじる幸せ」

shiawasewofuminijiru.jpg


 29日夜公演を観ました。

 観客一人ひとりに花を一輪もたせて入場し、舞台上の遺影に置かせる演出。開演すると、その遺影に花を手向ける女子高生。彼女はこの死に関わっているらしい。といったプロローグ。

 集団自殺をしようと集まった男女のひとりが遺影の主。ただ、彼は自殺を阻止しようと潜入した男で、スーパーポジティブなキャラでした。ほかの人たちは苛立ち、彼を監禁して遺書を書かせて一緒に死のうと考えます。そのために拷問をはじめるのです。冒頭、遺影の前に立つ女子高生もこの中にいますが、監禁をしていることに疑問をもって、かといって、強く抵抗できるわけもなくといった状況が続きます。

 この拷問を目の前で実演しているのですが、演劇であることの効果と限界を考えながら観てました。水責めは、ちょっと心配するくらいの長さでしたが、上半身を裸にして乳首に洗濯バサミって、実際には痛そうなものの拷問としては甘く見えますし。熱々おでんのくだりでは、ユルんだ空気になってました。目の前で演じられることの絶対的な説得力に反して、迫真性がないように感じられました。

 自殺しようという人たちのキレイごとでは済まない境遇があり、必ずしも共感できなかったりしますが、それでも生きることの希望を示しているところに着地しています。

 ただ、私には、そもそも監禁に必然性があまりないように思えるのが弱点と映りました。


 作・演出 谷賢一
 出演 玉置玲央 中井理恵 我妻三輪子 小松美睦瑠 永山智啓 廣瀬正仁 百花亜希 佐々木潤 山口オン
 タイニイアリスにて
posted by 行き先不詳 at 21:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

劇団、本谷有希子「甘え」

amae.jpg


 29日昼公演を観ました。

 小池栄子が主演ですが、ふだんの小池栄子っぽくないキャラクターで、粗暴な父親との二人暮らし、家を出たいのに出られず、抑圧され、ねじれた関係のようで、近親相姦を疑わせるほど。ほかの登場人物に、させ子の友だち、その憧れの“先輩”というサイテー男(久しぶりに「スーフリ」という言葉を聞いて、一瞬なんだっけ?って思いました)、それから、父親の新しい恋人。

 極端なキャラクター、選択される言葉のセンス、異様なシチュエーションにゆるみを感じさせ、笑いがもれます。

 人のせいにする姿勢や、いろんな本に答えを見出そうとしたりする主人公は家族や恋愛などの関係を夜這いというキーワードで相対化して見せたように思いましたが、全体的にわかったようなわからないような感じで終わっちゃいました。


 作・演出 本谷有希子
 出演 小池栄子 安藤玉恵 水橋研二 広岡由里子 大河内浩
 青山円形劇場にて
posted by 行き先不詳 at 21:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。