2010年08月30日

「今は亡きヘンリー・モス」

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 サム・シェパードの戯曲と言っても、あまりピンと来ないのですが、どうも評判がいいので、足を運んでみました。26日の夜公演です。

 父親が亡くなった部屋に兄と弟がいて、まだ遺体がベッドにある状態。弟は後から来たので事情がつかめず、久しぶりに再会した兄に不信感をもっていて、とげとげしく兄の言うことに噛み付いて張りつめた空気を醸します。そこから、弟が父親の死を探り、また、家族がバラバラになった過去の出来事に焦点を当てる展開です。

 物語がどうこうより、出演者らの鬼気迫るという言葉がぴったりくるような迫力のある演技に息を呑みます。たいへん惹き付けられ、観て損はなかったと思わせました。ただ、ちょっと2時間半は長いかなというのも正直な感想です。

 作 サム・シェパード
 翻訳・演出 小川絵梨子
 出演 谷田歩 伊礼彼方 中嶋しゅう 田中壮太郎 福士惠二 久世星佳
 赤坂RED/THEATERにて
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キリンバズウカ「ログログ」

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 いやぁ、面白かったです。キリンバズウカは今回がはじめてでしたが、今年観た舞台の中でも、1、2を争うくらいじゃないかなと思いました。それだけに、前回の公演を観てないのも残念でしたし、カーテンコールが1回で終わったことに驚いちゃいました。何より、これが4日間しか上演されないって、どういうことだろうと不思議に感じるくらいです。
 28日の昼公演を観ました。


 1 トリッキーな設定のキャラクターが物語のカギを握ります。中学時代に校舎からの転落事故を起こした男なのですが、中心となるのは彼のクラスメートたち。いじめにあってたのかが謎として提示されているとも言えますが、彼が記憶障害でその当時のことを覚えていないだけでなく、混線するようにして、ほかの人の記憶を取り込んでしまう性質をもってます。はじめのうちは気持ち悪さをにじみさせるキャラで、だんだんと抜けのいいおかしさに変わっていって脱力させられます。

 2 多くのキャラクターのつながりが、見失わない程度に複雑に入り混じっていて、それぞれの関係がいろんな物語としての要素として重なって多彩です。

 3 私は、演劇的な見せ場として、隠されたり抑えられたりした葛藤が表面化して衝突するという展開が好みですが、本作でも終盤の修羅場具合に緊張感があり、また、そこにちょっと関節を外したようなズレたやり取りもあったりして面白かったです。

 4 笑いにセンスのよさが感じられ、物語の中で適度に、かつ、意外なタイミングなんかで入ってきたりして、好感がもてました。

 5 出演している俳優すべてを知っているわけでもないですし、知ってるといっても、前に小劇場で観たことがある程度ですが、気になる俳優らが多数出演していて、キャスティングでも要注目作となってました。


 そして、次回公演が2011年秋って…、あまりに先のこと過ぎます。


 脚本・演出 登米裕一
 出演 三浦俊輔 中川智明 岡田あがさ 金沢涼恵 市川訓睦 こいけけいこ 川村紗也 堀越涼 永島敬三 中原裕也 川田希
 シアタートラムにて
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2010年08月29日

劇団昴ザ・サード・ステージ「イノセント・ピープル」

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 この劇団の存在もよく知らなかったのですが、先日観た渡辺源四郎商店の舞台が面白かったことから、畑澤聖悟の作で原爆をテーマに書いたという本作がどんなものになってるのかをぜひ観てみたかったということで。
 26日の夜公演を観てきました。

 この作品では、原爆の開発に関わったアメリカ人の側から描くことで、ふだん語られるものとは違う視点に立っています。1963年のロスアラモス20周年記念式典が行われた後からはじまって、1943年から2010年までの間を行ったり来たりしながら、物語は展開します。中心となるのはブライアン・ウッドという科学者の妻と子どもたちで、研究所の仲間と再会する場面などで、彼らの考え方や人生の選択、時代背景などが明らかになっていきます。

 作中、さかんにジャップという単語が出てくるように、侮蔑的だったり差別感情まるだしの発言をしたり、デリカシーを欠く登場人物がいたりします。これがちゃんと神経を逆撫でするような不快さを伴います。それとは逆に、原爆の開発に対して罪の意識に苦しむ人物もいたりします。あるいは、後半になって、研究者としても逸脱していると言える罪を犯していたと知れる人もいます。ただ、主人公の科学者は、そういう差別的な顔も見せなければ、逆に、道義的な責任を表明しないし感じてもいない“ふつう”の人なのです。

 この男の息子は、父親として反対したにも関わらず海兵隊に入隊し、ベトナム戦争で負傷し、下半身不随になってしまいます。また、娘は、知り合った日本人と結婚して、広島に住むことに決め、それ以来、絶縁状態へと至ります。日本人の登場するところでは、口より上を隠すマスク(オペラ座の怪人に出てくるような)をしていて、表情が見えず不気味に映るところが、たいへん効果的でした。

 そしてポイントになるのは、終盤で父親が広島に行くところで、日本人から囲まれて原爆について謝罪を要求されるという場面が出てくるのですが、少なくとも私には、日本人の吊るし上げ的詰問に同調できないと感じたのです。そして、彼に謝ってほしくないとさえ思いました。そのように感じたことに、驚かされました。彼が謝罪をしないことは、原爆について、研究者として出した結果以上のことに対して無頓着だということの表れでしょうが、そこに憤りを感じることなく、感情移入しながら観ていました。

 アメリカ人が原爆投下に対して正しかったと考えているなんて聞けば、日本人としては感情的になるところですが、それが一面的な反応に終わることに対しての問題提起になってると思います。そして、重いテーマだというばかりでなく、何より、面白かったです。

 
 作 畑澤聖悟
 演出 黒岩亮
 出演 遠藤純一 平林弘太朗 山中誠也 石田博英 福山廉士 要田禎子 大島大次郎 矢島祐果 高草量平 市川奈央子 新野美知 田村真紀 高木裕平 江川泰子 あんどうさくら 槙乃萌美
 シアターグリーンBIG TREE THEATERにて
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真心一座身も心も「流れ姉妹〜たつことかつこ〜」

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 「真心一座 身も心も」が第4章での終了に先立って、“幻の第1章”を再演するということで、足を運びました。私が観たのも第2章からだったもので。
 26日の昼公演を観ました。

 第2章と第3章のあらすじとかは、うろ覚えくらいに怪しくなりつつあるとはいえ、ある程度は覚えていますし、このシリーズのテイストはわかった上だということで、はじめっからすんなりと入り込めて、かつ、相当面白かったです。レイプシーンのおかしさとバカバカしさと哀しさも最高でした。

 第4章のゲストとして迎えるのが古田新太と池田成志だとのことで、ちょうど客席に二人並んで目立ってましたが、まさしく必見ということになりました。


 脚本 千葉雅子
 演出 河原雅彦
 出演 松重豊 粟根まこと 千葉雅子 村岡希美 坂田聡 河原雅彦 市川しんぺー 政岡泰志 伊達暁 信川清順
 TOKYO FM HALLにて 
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「キラー・ヴァージンロード」

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 岸谷五朗の監督作品。脚本にも名前が入ってます。

 上野樹里が主演で、結婚式前夜に誤って大家を殺してしまって、どうしようと右往左往する女性を演じてます。その途中、自殺したいのになかなか死ねない女性として木村佳乃が登場。かなりポップでドタバタなコメディといえます。

 
 きつい言い方になっちゃいますが、私の中では、今年観た中で一番つまらなかったです。冒頭のミュージカル部分で、醒めてしまった私は、その後のすべてに乗り切れず、笑いどころらしきところも、ことごとくスルーしちゃいました。なぜか、祖父との思い出話に焦点をしぼるのも、全く感動的でなかったです。
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2010年08月25日

山本幸久『ヤングアダルトパパ』

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 ある種の問題作と言えるくらいで、ちょっと戸惑いつつ読み進めたかんじ。タイトルのとおり、中学生なのに父親になって、そのパパとしての奮闘ぶりが軽いタッチで描かれてます。

 親が離婚して父子家庭となるも、父親は舞台監督で地方巡業が多く留守がち。中学1年生の息子・静男は、家政婦代わりに来ることになった20代の女性・花音と深い関係になって、花音の妊娠、出産に至ったというわけです。花音が妊娠を告げると、静男は父親になることを素直に喜び、子どもを産むことになるのです。

 小説の構成としては、その産んだ母親がどっか行っちゃって、生後5ヶ月の男の子をひとりで世話している静男が、夏休みが明けたらどうやって育てようかと現実的な問題を解決するべく動いている部分を本編として、花音との出会いから出産に至るまでを同時進行的に挿入する形。

 その構成からも、状況が読み取れるまで、不思議な設定が少しずつ見えてくる興味と、過去が明らかになることで本当の父親は別にいるんじゃないかという予想がありました。そのあたりがはっきりしてくると、展開自体は地味目なので、話としての盛り上がりには欠ける嫌いはあるかと思います。

 ただ、この手の物語で、現実的な書かれ方でもありながら、ここまでほんわかと描いちゃってるのは、逆に野心的だなと感じたほど。静男は、ちゃんと父親としての愛情をもっていて、子どもの世話をすることも苦になっていないようで、そういうところも、あまり目にしたことがない気がしました。ただ、この題材にして、問題に切り込んでいるといった迫力はなく、真正面からぶつかっていってないところに、逆に狙いを見出せるのかもしれないですが、小説として素直に支持できるかとなれば、首をひねります。 
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2010年08月24日

「スペル」

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 サム・ライミ監督作品で、去年、結構話題になってたかと思います。間に合ったら劇場で観ようと思ってるうちに公開が終わっちゃった、よくあるパターンでした。


 銀行の融資担当をしている主人公の女性が、返済の猶予を懇願する老婆を相手にして、今度ばかりは無理ですよと突っぱねると、突如の逆ギレ。その上、呪いをかけられ、とんでもない目に遭う連続です。この老婆が不気味さを体現するような風貌で、呪う前から、ただ者じゃない空気を醸し出してて、このキャラクター造形は素晴らしいです。

 ホラーなんだというつもりで観はじめましたが、私に限って言えば(かつ、劇場で観てないことも影響するかもしれませんが)、ほぼ怖くはないです。真実味がなく、主人公も含めて誰にもほとんど感情移入しないので、恐怖につながらないのかなと。それよりは、不気味さとか気味悪さ、驚かせるような効果音なんかにビクッとさせられます。それで、“ショック・エンターテインメント”なんだと理解しました。

 というか、何度も笑いました。こういう作品の楽しみ方としてどうなのかわかりませんが、私は気楽に面白がってました。意外とそんな人も多かったりして。

 ただ、ラストは、どんでん返しにしては、ちょっと見え見えなのではないかと思いますが、どうなんでしょう。 
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2010年08月23日

「スリー・ベルズ」

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 ふた足以上早い、クリスマスを舞台にした3つの物語。それぞれが同時進行して、最後にクロスしますが、基本的には独立した3本です。

 後藤ひろひとが作・演出・出演で、かなり遊び心も入っていて、冒頭のアナウンスを客席から壇上にあげて朗読させるなんて、なかなかなアイディアだとは思います。それはそれとして、後藤ひろひとが作者として語る上に、作者なのに俳優として役を演じる、というメタフィクションなくすぐりなんかは、ちょっとうるさくて、物語への没入を妨げる効果のほうが強く感じて、私は好きではなかったです。というか、笑えれば、それはそれでアリでしょうが、私には客席に起こる笑いほどにはおかしくはなかったもんで。

 そして、個々の物語そのものも、どれも、ん〜、というところでありました。


 作・演出 後藤ひろひと
 主なキャスト 音尾琢真 団時朗 岡田浩暉 石丸謙二郎 佐戸井けん太 明星真由美 ちすん ウーイェイよしたか 後藤ひろひと
 パルコ劇場にて
 
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「美丘」〜第7話

 次週が24時間テレビのため、クライマックスを控えて1週空きますが、現在第7話まで終わって、いよいよこれからが大変です。

 原作は石田衣良の同名小説。美丘(吉高由里子)とは主人公の女性の名前で、自由奔放、天真爛漫な大学3年生。懸命に生を謳歌しようとしているのですが、その実、脳に不治の病を抱えています。若くして、記憶を失っていき、体もいうことをきかなくなるというのです。しかも、もう命も限られていて。そんな美丘に振り回されながらも強く惹き付けられてしまう大学の同級生・太一(林遣都)は、彼女の病気を知って、なお一緒にいたいと決意を固めるのです。

 毎回、展開が早くて、次のステップへとぐんぐんと展開していき、いわば、この手のドラマの常套的な見せ場は、あえて引っ張らずに描いているという気がしてます。7回の段階では、ふたりの同棲生活から1ヶ月、記憶障害だけでなく、運動機能障害が発してしまって、これはいよいよ、病状が坂道を転がり落ちるように悪化していく、ということのようです。かなり辛そうですが、今後の病状の描かれ方、その苛酷さと、それをどうやって太一と美丘が受け止めていくのかが、見所となっていくのでしょう。

 このドラマの好きなところは、観る前からの期待でもあった、吉高由里子ならではのキャラ立ちぶりで、これは原作を知らない私の目には、はまり役として映ります。観ていて、楽しくて仕方ありません。このふたりの幸せな日々がもう少し描かれてほしいという願いをもってしまします。他方の林遣都も、優しくも芯の強さを見せる誠実な態度に無理がありませんし、振り回される感じもぴったりだったします。

 印象的な場面では、5話だったか、主治医(谷原章介)が美丘の母親(真矢みき)に対して「残された時間をどう使うか、これには正解がありません」というセリフが重く、真摯な印象を与えています。

 これに対して、それぞれの両親の描かれ方が、今ひとつに感じてしまいます。とりわけ、同棲をはじめるきっかけは、交際を一切禁じたことに対する反発としてだったのに、知らないうちに、同棲か別れるかの二者択一になってて、納得できないものがありました。ちょっと過程が無理矢理に思えて。
posted by 行き先不詳 at 22:38| Comment(0) | TrackBack(1) | TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月22日

桜井鈴茂『アレルヤ』

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 ざっくり言えば、饒舌文体の青春小説といったところ。小説を書くまでの話でもあって、それがそのままその作品にもつながっていると読めるような。それも、自分で書きたくなるような衝動もないんですけども。そして、主人公のシロウはマリファナの売人で稼ごうとか思ったりして。それもかなり軽く考えてるように見えて。男ともだち・ドラムとルームシェアしているところへ、タイ旅行中に知り合った自称コールガールの久美が転がり込んでくるし、常連客として通うジャズ・バーのヒロ子さんなんかも含めての恋の話もあったり。

 これが著者のデビュー作らしく、2002年の朝日新人文学賞を受賞しています。ただ、全く知らない人として手に取ったのでありまして、名前を「さくらいすずも」って読むのもしばらく気づかなかったくらい。渋谷パルコのリブロで「うらなつ 2010」っていうフェアをやっている中から、選んだ1冊です。サッと冒頭を読んでみると、これはイケそうな予感があったということで。ちょっと長いのですが、書き出しを引用してみますね。
 ざっと簡単に、来し方を。
 そう。私は、早春から盛夏にかけての燦々たる陽光の下で、事実はどうあれそのように多くの人に信じられていたはずの輝かしい陽光の下で、おおむね順調に、つまりその、小学五年でクラスの美化委員に選ばれ、中学三年で同級生の女の子の恥丘に手が届き、高校一年でパイロットになる夢をあきらめ、と、例えばそういうことだけども、まあだから繰り返すが、おおむね順調に、育った。それに、祖父母は老年痴呆になることもなく長生きして小遣いをくれたし、両親は教養こそあるとは言えないにしもて父は勤勉で母は心優しく、家庭はわずかの罵りといっぱいの笑いに満ち、まあ、正月をハワイやギリシャで過ごすことはなかったけれども、誕生日やクリスマスが来ればキャッチャーミットやラジカセくらいは買ってもらえ、ゆえに、あ、いや、ゆえにというのもへんかな、とにかく親元を離れてからは少々世間を甘く見てしまったりもして、手痛い目にあったこともあるにはあるが、それも幸い致命傷には至らず、そう、要するに、ぬくぬくというわけではないにしろ、それなりの愛と希望とモラルは絶やさずに、これまで三十年とちょっと生きてきた。

 そして、ある朝、野良猫の叫び声に起こされた主人公は、自分がヘリに立ち尽くしていると実感するのです。足元の沼には絶望的な状況が待ち構えている、というような。

 タイトルからしてそうですが、いろんなところで宗教的な言葉や行動が出てきて、神への祈りだとか啓示とか、祝福なんかを想起させます。そして、ここは、文字通りの「覚醒」だと言えるし、小説を書くことを勧められるときに世界を創造しろって言われます。まあ、覚醒といっても、遠回りした挙げ句に、危ない仕事を辞めて地に足の付いた生活をしろという託宣を受けるのですが。とかいっても、宗教的とか精神性が前面には出てこないので、こだわり過ぎかもしれませんが。にしても、読みながら、なんだろうなぁとわからないまま、気になるところでした。


 あまりの饒舌ぶりに、キャラが頭に定着するまでは、ページを閉じた後に、どんな話だったか思い出せないくらいでした。でも、文章を目で追ってる間は、読む愉しさがあるのです。

 もう1本の収録作の「おれのユッキー」も、途中、おいおいなんていう調子のいい、とか思いながら読み進めてましたが、これがまた、よかった。
posted by 行き先不詳 at 21:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「ロックンロール」

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 すいません、私、甘く見ていたようです。
 というのも、作者のトム・ストッパードという名前なんて、「コースト・オブ・ユートピア」の記憶も新しいのに、タイトルとキャスティングから、そんな難しくもないのでは、なんて軽く考えておりました。二日酔いが醒めきらぬまま(兼寝不足気味)の身としては、かなりの歯ごたえ。いやぁ、失敗しました。
 昨日の昼公演です。

 1968年のプラハの春をめぐる、大学の師弟での意見の食い違いからはじまって、イギリスとチェコに別れたそれぞれの半生を描きながら、政治的な主題を専門的な用語も駆使して扱われ、それでいて、まだ反体制としてのにおいも強い頃のロックが同時代の文化として前面に絡んでくるという作りとなっています。といっても、中心となるのは、人間ドラマでして、それが硬い素材にまぶされながら構築されているという印象です。


 作 トム・ストッパード
 演出 栗山民也
 出演 市村正親 秋山菜津子 武田真治 黒谷友香 前田亜季 山内圭哉 上山竜司 西川浩幸 月船さらら 森尾舞 檀臣幸
 世田谷パブリックシアターにて
posted by 行き先不詳 at 21:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月21日

「フィッシュストーリー」

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 伊坂幸太郎の原作を中村義洋監督が昨年映画化。「アヒルと鴨のコインロッカー」と同じ組み合わせということに。原作は短篇小説なので、かなり脚色されています。

 1975年の、売れずに終わった日本のパンクバンドのある曲が、回り回って”世界を救う“という話。1982年では、そのバンド「逆鱗」の「FISH STORY」という曲についての都市伝説が語られます。そして、それをきっかけに運命の出会いがあって…。2009年では、修学旅行中に一人だけフェリーから降り損ねてしまった女子高生が、正義の味方になるべく育てられたというパティシエと出会います。そしてそのフェリーがシージャックされて…。2012年では、地球に彗星が衝突する5時間前、ほぼ万策尽きてしまったという絶望的な状況。なぜかレコード店を開けて、音楽の話をしている店主と客。

 それらの時間を行ったり来たりして、進行していきますが、それぞれ気になった結末部分がラストで明らかになりつつ、絵解きとして全部がつながります。そこに気持ち良さを感じる向きもあるかと思いますが、私には、今ひとつスマートでないと感じられました。

 何より好きなのは、「逆鱗」パートでして、これこそ小説で表現できないところであって、こんなバンドがいたら人気出るのに、とか思ってしまいます。「逆鱗」のリーダーが伊藤淳史、ヴォーカルは高良健吾が演じてます。本作の音楽プロデューサーは斉藤和義ということですが、「FISH STORY」というテーマ曲、好きです。そして、間奏部分で無音の時間が1分ほどあって、その謎が明らかになるレコーディングのシーンがクライマックスと言える気がします。

 逆に、森山未來演じる“正義の味方”は、尋常でなさが表現されてるのでしょうが、もう少し鮮やかさが前面に出てほしい気がして、原作で一番楽しいシーンなだけに、欲が出てしまいます。

 この作品では、売れないけど本当は力がある創作表現が、いずれ時空を超えて、強い影響を与える。世界を少しでもいい方向へ導くといった希望が語られてるのかなと見ました。

 「逆鱗」のドラムが放つセリフが象徴的です。
 俺たちの曲は理解されねぇ。
 そして、何より厄介なのが、俺たちは自分たちの音楽が正しいと信じてる。

 これは、原作にも登場しますが、本作では際立って響くものがありました。


 主なキャスト 伊藤淳史 高良健吾 多部未華子 濱田岳 森山未來 大森南朋 
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2010年08月17日

「母なる証明」

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 昨年日本公開のポン・ジュノ監督作品。ウォンビンが兵役から復帰後初の出演作ということでも話題になってたかと思います。

 知的障害らしき息子(ウォンビン)と、彼に一心同体というくらいに愛情を注ぎ込んでいる母親(キム・ヘジャ)が二人暮らしをしています。ある日、その息子が殺人事件の容疑者として逮捕されてしまい、本人はよくわからないまま供述調書に拇印を押してしまうのですが、母親は息子の無実を信じて奔走します。

 途中までは、この母親の必死に息子を助けようとするところを面白く観てたのですが、残り30分くらいでしょうか、真相に近づいてからの息を呑む展開の連続に、複雑な感情が引き出されて、揺さぶられます。いやぁ、すごいです。切ないとか悲しいとか、そういうわかりやすいものではなくて、思わず天を仰いでしまう、とか、深淵を覗き込んでしまった心境とでもいったらいいか、そういったかんじです

 母と息子の封印された過去が噴き出す場面がありますが、個人的には、もっとそこに迫ってほしかったところがありました。それって蛇足なのか知れませんが。
posted by 行き先不詳 at 22:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年08月15日

「曲がれ!スプーン」

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 ヨーロッパ企画の舞台を本広克行監督が昨年映画化したもの。「サマータイムマシン・ブルース」と同じパターンと言えます。そして、私がヨーロッパ企画と出会ったきっかけが「サマータイムマシン・ブルース」でした。
 
 元の「冬のユリゲラー」の2007年の再演と、映画版の上映と同時期に上演していた舞台版のほうは観ていて、私は結構好きですが、昨年の舞台を観ていた感想と同じく、「カフェde念力」という喫茶店でのエスパー・パーティのユルいやり取りはおかしいのに、だいたい毒グモのくだりあたりから、だんだんどうでもよくなってきてしまったところがあります。それと、最後にどうしてUFOにいっちゃうのかは理解に苦しみます。

 それから、透視実験のドラえもんの絵を四つ折りにして封筒に入れてたら、どっちにしても見えないだろッというのだけは、意図的かは知りませんが、ツッコミどころです。
posted by 行き先不詳 at 21:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする