2011年03月07日

カムヰヤッセン「サザンカの見える窓のある部屋」

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 カムヰヤッセンは今回が2回目。

 一線を退いている研究者のところに若い研究者とその妻が訪ねてきています。主は記憶を貯蔵できるチップの研究者で、自身にも、息子にもそれを使っています。脳には蓄積されなくても、体に埋め込んだチップによって記憶を完全な形で覚えることができる、というわけですが、必ずしも社会的に受け入れられてはいないことが窺われます。家には、息子とふたり暮らしで、家政婦を雇っています。

 前半は、この技術の仕組みが説明されていくことや、この家庭の背景、訪ねてきた研究者が怪しい言動を垣間見せることで真の目的がほかにあることなどがわかること、などによって謎が少しずつ明らかになる過程となっています。それが、後半になると、SF的設定を借りたホームドラマになっていくという展開です。

 ポイントとなるのは、チップの記憶は消去したり書き換え可能なため、本当にあった絶対に忘れえないような重要な事実についても、チップの記憶次第になってしまうというところにあるのです。ここでは、エピソードなどの周辺部分の記憶が命綱となっていて、これによってドラマティックな場面が描かれることになります。

 前半のミステリアスな空気といい、全体を通してあるとぼけた味わいといい、75分程度の短さでしたが、とても楽しめました。


 脚本・演出 北川大輔
 出演 北川大輔 甘粕阿紗子 金沢啓太 遠藤友香理 小島明之
 3月6日昼の部
 小劇場楽園にて
posted by 行き先不詳 at 23:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月06日

「TRAVELING」

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 出演者の小劇場な顔ぶれに期待をもったのですが、実際観てみるとちょっと様子が違っていました。

 タイムトラベルを扱ったコメディですが、あんまりタイムトラベルものとしても、コメディとしても、それほど惹かれるものがなく、出演者らの演技にもしっくりと来ない感じがあって、全体的にちぐはぐな印象をもちました。


 作・演出 野坂実
 出演 佐藤アツヒロ 内田亜希子 村上誠基 細野今日子 青木直也 望月綾乃 金丸慎太郎 川本亜貴代 藤田秀世
 3月5日夜
 赤坂RED/THEATERにて
posted by 行き先不詳 at 11:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

範宙遊泳「労働です」

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 範宙遊泳は今回がはじめて。3月5日の昼公演を観ました。

 客席はなく、適当に空いたところに座布団を敷いて、みたいな状態でした。観客が向かい合うような恰好で、中央に通路ができ、左右に作業をしている人たちがいて、あっちを見たり、こっちを見たりといったかんじ。

 仕事自体は、労働のパロディ的様相もあるヘンな作業で、仕事あるあるとか職場の人間模様とか、それはそれで面白いんですが、そこにいくつかのコーナーが持ち込まれて、イベント風なものも含めて、いわゆるストーリーがどうこうといったものとは違った内容でした。とくに、劇場の外と中継して横浜駅前で労働についてインタビューをするというのは、すっごく面白かったです。刺激的なアイディアでした。

 どこをとっても、素直に楽しめるものでして、次回の公演にも足を運びたいと思います。

 
 作・演出 山本卓卓
 出演 熊川ふみ 埜本幸良 浅川千絵 大石憲 大柿友哉 川口聡 大森美里 加藤サイセイ 丸石彩乃 斉藤マッチュ 田中美希恵 福原冠 緑茶麻悠 高木健
 STスポット横浜にて
posted by 行き先不詳 at 11:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「悪魔を見た」

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 イ・ビョンホンが主演で、婚約者を殺した犯人に復讐の鬼と化す男を演じていますが、これがまた相当なエグさです。前半のうち、何度か観たのを後悔しそうになるくらいでありました。

 チェ・ミンシクが犯人役で、その婚約者へ襲いかかる容赦のなさといい、その後の猟奇的な場面といい、えげつないんですが、それは序章に過ぎません。イ・ビョンホンの役は韓国のCIAみたいな組織の人のようなんですが、一般人ではないんですね。ムチャクチャ強いですし。それで、捜査線上に上がっている男を片っ端から、当たっていって、真犯人にぶち当たります。そこから、執拗で“完璧”な復讐を仕掛けていくのです。痛めつけてから逃して、また新たな犯行をしそうなところを捕まえて痛めつけるといった連続です。GPSのカプセルを飲み込ませているので場所はわかるのと、音声も盗聴できちゃっているのです。

 犯行の暴力描写と残虐な復讐がそれぞれ目を背けたくなるような描写の連続です。後半に至って、あれだけ復讐されている殺人鬼が犯行を繰り返そうとするし、どんだけ非道に痛めつけても許しを請うような人物ではないため、どこまで復讐すれば納得できるのか、という逆説的な問いが出てきます。これに対して、私なんかは、復讐の不毛さより、復讐の不徹底を感じてしまって、おそらく作品の意図するところとは違うんだろうと想像します。

 それから、犯人が捜査資料の中になかったら…とか、そもそも犯人の成算があるように見えない犯行ぶりとか、ほかにも疑問があるのですが、あんまり説明的でないのは美点なのかもしれません。というか、細かいことをはねのける強烈さがある映画です。

 それから、イ・ビョンホンって、出演作品をあんまり観たことがなかったんですけども、本作でなるほど魅力的な俳優だと納得しました。

 
 監督 キム・ジウン
posted by 行き先不詳 at 11:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

星野智幸『俺俺』

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 著者の作品を読むのは今回がはじめてですが、過去の作品を読んでみたくなりました。

 ふとしたはずみに俺俺詐欺をしたところ、なりすましたはずの男の母親から本当の息子として扱われ、しだいにが増殖していくというアイデンティティ・クライシスな話です。

 最初の章がめちゃくちゃスリリングで最高です。ただ、そこから、しだいに観念的というか哲学的な方向へと進んでいって、それもしばらくはスゴい、スゴいと読んでましたが、終盤に近づくにつれ理に落ちてるというか、切迫感がなくなってきているように思われ、面白味を感じなくなっていきました。これがかなりの傑作として語られても異議をはさむものではありませんけど。
posted by 行き先不詳 at 11:19| Comment(0) | TrackBack(1) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月05日

空想組曲「ドロシーの帰還」

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 空想組曲は2回目。2月27日の昼公演を観ました。

 「オズの魔法使い」の設定を借りたダーク・ファンタジー「オズの世界」を書き続けている作家がいて、オズの登場人物、オズの世界の登場人物、この作品の登場人物たち、といった重層的な構造で形作られています。

 中心となるのは、作家の卵たちがそれぞれの作品を見せ合って批評し合う“トキワ荘”的な集まりで、その場所が「オズの世界」を書いた作家が打ち合わせに使っている喫茶店でもあるのです。

 その作家の卵たちが、「オズの世界」が劇中劇として描かれる登場人物となっていて、それぞれがオーバーラップされた役として描かれます。

 作家や漫画家を目指す若者たちの夢と挫折と葛藤がとても痛々しかったり切なかったりするのと、「オズの世界」の作者の昔の事件の重さもあり、たいへん見応えある作品でした。


 作・演出 ほさかよう
 出演 藤田記子 川田希 井俣太良 久保貫太郎 二瓶拓也 小玉久仁子 齋藤陽介 佐藤滋 北村圭吾 梅舟惟永 小野川晶 中田暁良 中田顕史郎
 赤坂RED/THEATERにて
posted by 行き先不詳 at 11:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

長嶋有『祝福』

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 著者の作品は久しぶりになっちゃいました。一時、デビューから順番に読もうとしてたのに、中断したままとなっています。今回は、最新作を手に取ってみました。

 昨年12月の刊行ですが、デビュー10周年で第10作となる作品だそうで、10篇からなる短篇集です。気に入ったところでは「丹下」「噛みながら」「祝福」といったところ。

 この中では、最も事件らしい事件が起こるのが「噛みながら」。銀行強盗に遭いながら、その場で起こることなどに触発されて甦る昔の出来事にまつわる記憶が語られ、しかも緊迫した状況と並行して進んでいくところが、面白かったです。

 技巧的だなと感じるものが多かったですが、いかにも技巧を凝らしたというものではなくて、実験的とかトンガッてるという印象はありません。題材が身近なところも受け入れやすいでしょうし、読みやすいです。
posted by 行き先不詳 at 11:28| Comment(0) | TrackBack(1) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月02日

「冷たい熱帯魚」

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 これ、実のところ「英国王のスピーチ」と同じ日、続けざまに観たんですけども、対照的とさえ言えないくらいに全く異質の作品です。少なくとも、同じようなスタンスで人に薦めることができません。

 エログロとか暴力描写とか、そんな単語では足りない映像が登場しますので、人によっては受け付けないかもしれないです。ちなみに、R18です。

 まず、自分のものさしでは測れない内容でした。面白いとか面白くないとか一口に言えないですし(本当は面白いんですけど)、興奮したとか気持ち悪かったということも意外となかったりもしました。逆に、笑えるところも結構あったりとか。とにかく、猛毒注意な作品で、園子温監督の前作「愛のむきだし」を観てなければ、まずはそっちから観ることを薦めたい。

 一応、主役は吹越満となりますが、何といっても、でんでんがスゴい役でして、上手とか下手とかを超えた迫力があります。この男に影響されて、主人公が終盤になって、豹変することになりますが、納得感がありました。

 とんでもない作品です。ちょっと忘れられそうにありません。
posted by 行き先不詳 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする