2007年05月24日

ナイロン100℃「犬は鎖につなぐべからず   〜岸田國士一幕劇コレクション」

inuwakusarini

 岸田國士の戯曲7本を織り交ぜて見せる、ナイロン100℃の公演です。青山円形劇場に昨日見てまいりました。

 岸田國士といっても、岸田戯曲賞の名前に残ってるだとか、娘が岸田今日子なんだとかは知っていても、舞台を見たことはほとんどなかったと思います。


 それぞれ、とくに大きな起伏のある物語ではなく、どこにでもあるような、たとえば隣りの家で起こっていてもちっともおかしくないような、日々のできごとです。些細といえば些細な、何ということのないやり取りが交わされます。ところが、これが全然退屈ではないんです。豊かなニュアンスにあふれた言葉と、含み笑いを誘うような会話があって、それらのやり取りの中に普遍的なものが見出されるからです。

 今回の公演では、ただ順番に演じていくのではなくて、コラージュというかシャッフルというか、切り貼りするようにして、進行していき、さらにそれぞれを微妙にリンクさせたりする仕掛けを施して、ある町の光景という形を作っています。それも含めて、ケラリーノ・サンドロヴィッチ潤色・構成・演出となっているわけですが、どの程度の「潤色」がなされているのかなあと、疑問に感じながら見てました。

 場面転換が結構あるわけですが、そのときに役者らのコンテポラリーダンスっぽい振り付けを使って印象的です。

 舞台と客席の距離の近さが、いつも以上に感じられ、本当に間近で見る醍醐味が得られました。それに、ああ、この表情は向こうの人には見えてないんだな、というところもあって、当然その逆もあるんですが、俳優の存在をいつも以上に感じさせられました。

 私が、一番強烈な印象を残したのは「隣の花」の緒川たまきで、これはもう今回の公演がもつイメージを最大に体現しているんじゃないかと、それくらいに思っちゃいました。「驟雨」の松野有里巳もとてもハマってました。


 7つの戯曲というのは、「犬は鎖に繋ぐべからず」「驟雨」「隣の花」「屋上庭園」「ここに弟あり」「ぶらんこ」「紙風船」ですが、私がこの中で気に入ったのは、「驟雨」「隣の花」「ここに弟あり」でした。

 「驟雨」は新婚旅行から帰ってきたばかりの妹の愚痴を聞く夫婦の話で、その愚痴の内容もそれほどひどいというほどではなく、そのせいもあって夫と妻とで微妙に態度が違うというかんじ。

 「隣の花」は、隣同士に住む夫婦が、垣根を境にしてよく顔を合わせていますが、それぞれ互いの相手のことに多少の不満があることを垣間見せつつ、それぞれの夫が隣の妻と距離を近くしていく予兆を感じさせる話。

 「ここに弟あり」は少し歳の離れた兄に頭が上がらない弟は、女と同棲生活をしていますが、兄が突然上京して家に訪ねてきます。兄は、相手の親にも反対されているような状態はよくないし、それなりにちゃんと筋を通すように、弟の同棲相手と話し合い、またそれなりの配慮も示します。


 「隣の花」なんてとくにそうですが、こりゃたいへんなことになるぞ、というところで終わってしまって、あれ終わっちゃったよ、というあっさり具合です。でも、本当に面白いんですよ。言葉づかいも、上品で古めかしいところも、新鮮でした。上演時間は3時間(途中10分の休憩含む)ということですが、意外なほど長く感じませんでした。


 見はじめてから気付きましたが、成瀬巳喜男の「驟雨」も岸田國士の戯曲を組み合わせてできてて、内容でも重複しているものがありました。あれもすごく面白くて、個人的には「浮雲」よりも好みでした。


 出演
 緒川たまき・萩原聖人・大河内浩・植本潤・松野有里巳・松永玲子・みのすけ・村岡希美・長田奈麻・新谷真弓・安澤千草・廣川三憲・藤田秀世・植木夏十・大山鎬則・吉増裕士・杉山薫・眼鏡太郎・廻飛雄・柚木幹斗
posted by 行き先不詳 at 23:28| Comment(0) | TrackBack(1) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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ナイロン100℃「犬は鎖につなぐベからず」@青山円形劇場
Excerpt: 客演で、緒川たまき、大河内浩、植本潤、松野有里巳、萩原聖人というところ。いかにも、大正ロマン・竹久夢二風の緒川たまきは色っぽかったし、萩原聖人も大正時代の書生っぽさが似...
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Tracked: 2007-06-02 16:33