
シアターコクーンで、今日まで上演されていた舞台版を火曜に観てきました。演出は蜷川幸雄、主演は中井貴一。
パンフレットの蜷川幸雄の言葉にこうあります。
一般的には、これは陪審員制度のもと、明らかな有罪として扱われていた少年による父親殺しが覆るスリルと、人が人を裁くことの意味、正義や真実の追求がメインテーマの作品と考えられています。けれど読めば読むほど、実は「裁きの話」などではなく、「人間とはどういう存在なのか」を人が言葉を感情をぶつけ合いながら問い直す、そこにこそ力点があると思えてきたのです。
私は、観る前は、そこまで言えるような話じゃないと思うけどなぁ、と感じてましたが、これがなかなか納得させられるようなところがあって、驚かされました。陪審員たちが互いに意見をぶつけ合いますが、自分の正しさを確信している者が相手を説得していく困難さがあり、その確信の背景には偏見や誤解があったりもするわけです。個人への罵倒になったりもして、何度か、あなたにそんなことを言う権利はない、といったセリフが出てきます。人間と人間が向き合って、そのぶつかり合いのエネルギーの大きさが、自らの存在を証す言葉につながっているように感じられました。
感情的に意見をぶつけあっていく内容ですから、舞台だと生身の人間の存在感とかぶつかり合いの迫力があって、映像よりも強く訴えかけてくるものがあると感じました。出演者らの熱演は素晴らしいです。しかも、笑いが起こるところが結構あったのが意外でした。
ただ、西岡徳馬なんかは、たいへんな熱演だという反面、仰々しいというか芝居がかったキメがあって、ちょっとやり過ぎな気も。それと、斎藤洋介は私が観た回では、セリフ回しに不安を覚える箇所がありました。
キャストの中では、重厚で安定感のある辻萬長と軽くて粗雑なキャラクターの大石継太がとくに好きでした。ほかに、田中要次はとぼけたキャラでいい味出してたとか。
それから、
映画でいうヘンリー・フォンダの役を中井貴一が演じていて、とても弁舌さわやかで説得力があり、惹き込まれるのですが、果たしてそれでいいのか、という気もします。この人は有罪だと確信できないところから出発していて、あくまで無実かどうかはわからない立場です。孤立を恐れず、周りからプレッシャーを受けながら議論を続けていく、強さがあるという点はあるとしても、まるで無実と最初から確信しているように見えてしまうくらいの説得力です。
客席に三谷幸喜がいて、「12人の優しい日本人」が好きな私としては、この作品をいっしょに観ることがちょっとうれしかったりもしました。
作 レジナルド・ローズ
演出 蜷川幸雄
キャスト(陪審員長から12号までの順で)
石井愃一 柳憂怜 西岡徳馬 辻萬長 筒井道隆 岡田正 大石継太 中井貴一 品川徹 大門伍朗 斎藤洋介 田中要次
新川將人(守衛) 飯田邦博(声のみ)
シアターコクーンにて
posted by 行き先不詳 at 22:17|
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