2015年02月08日

「ビッグ・アイズ」

 私は今回はじめて知りましたが、実在の画家の実際にあった事件をティム・バートンが映画化。

 ウォルター・キーン(クリストフ・ヴァルツ)は、妻のマーガレット(エイミー・アダムス)の絵を自作と偽って売り、それがたいへんな売れ行きとなっていきます。妻には隠れて制作させる一方で、自分だけ名声を得ていくことになるのです。

 ゴーストライターの事件を想起させますが、夫のウォルターは、口がうまくて宣伝や商才はあるようで、彼がいたからこそ売れた面はあるのですが、アイディアを提供するとかはないので、彼との共作的なところは全くありません。ただ、妻の作品の作者を偽っているだけです。

 マーガレットにとっては、知らないうちに既成事実になっていて、売れているという事実と、共犯関係にあると脅されて言い出せなくなってしまったということで黙認してしまうのですが、それだけでなく、ウォルターに対して反抗できなくなってしまっています。映画の冒頭、元夫から逃げたところからはじまりますが、強く出る男に支配されやすい面があるのかもしれません。

 そういう意味では、創作にとっての本当の意味での作者とは、といったことではなく、ふたりの夫婦関係のあり方や生き方がテーマの中心になっているんだと思います。後半は、自分の作品として発表することの自由や生き甲斐を回復しようとする展開となっていきますし。

 作品自体について、ウォーホルには認められたらしき言葉が紹介されてましたが、マーガレットの作品の芸術的な評価がどの程度なのかが映画を観てても分からなくて、やっぱり、スキャンダル的なところが前面に出てしまうのかなと思いました。絵によって、これはいいなと思うものもありましたけど。

 クリストフ・ヴァルツが演じる口八丁のウォルターは、特に終盤の裁判シーンが茶番過ぎるくらいに軽薄さが強調されてます。二面性のある性格で、饒舌な陽気さと強圧的に責め立てるところに狂気を感じさせます。自分の作品でもないのに、名声を欲して嘘をつき続けるところにも、得体の知れなさを感じさせます。
 
 それから、男尊女卑の表れなのかもしれませんが、教会での悩みを打ち明けたときに受けたアドバイスのメチャクチャさが一番不快でした。
posted by 行き先不詳 at 21:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月07日

「ドラフト・デイ」

 NFLのドラフトをめぐる駆け引きを中心にしたドラマ。

 ケヴィン・コスナーがGM役で、ドラフトが開催される1日を描いています。ドラフトに向けた他のチームとの交渉や自分のチームのオーナーや監督との衝突、また、プライベートでの問題もあって、いろんな負荷が主人公を追い込んでいます。そんな状況下での駆け引きがスリリングです。

 日本の観客用にドラフトのポイント解説が上映直前に流れるくらいに、指名順位のトレードがあるなどドラフトの仕組みが特徴的です。結局のところ、ドラフトのルールにはよく分からないところはあって、だいたいこういうことだろうなぁ程度の理解で観てました。それから、ドラフトにかかる選手名などは、駆け引きの中心になるわけですから、ちゃんと覚えながら観てかないと多少混乱するかもしれません。アメフトとかNFL自体については、詳しい必要はないかと思います。

 最終的に、ドラフトの答え合わせとして、本当にその選手が活躍できたのかを知りたくさせるところがあるかと思います。それに、いろんなことが丸く治まり過ぎだろって気もしないですが、後味のいい着地となってます。
posted by 行き先不詳 at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月05日

「マエストロ」

 さそうあきらの同名マンガの映画化。解散したオーケストラが再結成することになって集まった楽団員たちが、無名の指揮者のもと再起を図る話です。

 有力なメンバーはすでに国内外の楽団に入ってしまっていて、残り物的な空気もあるのと、そこに現れた指揮者・天道徹三郎(西田敏行)は誰も知らない人で、態度は大きく、胡散臭く、でも、ただ者じゃないことが窺われる人物。

 主人公といえるのは、コンサートマスターの香坂(松坂桃李)で、オーケストラメンバーのお互いのエゴがぶつかったりして、まとまりを欠いたところもあるし、個人的な問題を抱えてたりもして、人間臭ささが出ているのですが、指揮者の天道が裏で動いたりして、問題を解消していくところもあり、次第に求心力をもったオーケストラの音楽が完成されていくのです。

 終盤の演奏会でのベートーベンの運命にはグッと来るものがあって、よかったです。それから、miwaが思いの外、魅力的な存在感を放ってて印象的です。

 監督 小林聖太郎
posted by 行き先不詳 at 19:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月01日

モダンスイマーズ「悲しみよ、消えないでくれ」

 モダンスイマーズを観るのはかなり久しぶりで、2010年7月の「真夏の迷光とサイコ」以来です。これといった理由はないんですけど、なんだか遠ざかってしまって。
 で、今回は公演がはじまってからの評判のよさに惹かれて足を運んだ恰好です。通路に座布団席を設けるという盛況ぶりでクチコミの効果も窺えました。

 物語の舞台は山荘で、妻を亡くした男が義父と暮らしています。立ち直れずにいて、世捨て人のようでもあり、ただ妻を亡くしたことに罪悪感をもっているようにも見え、生きる活力を失っています。

 そこに学生時代からの登山サークルの先輩たちが訪ねてくるのですが、はじめは彼のことを心配しているものの、次第にいろんな隠されたことが暴露され、修羅場と化していきます。

 新たな暴露ごとに修羅場が何度も繰り返されますが、それでいて、シリアス一辺倒ではなく、脱力させるところが随所にあって、笑いが起こります。狭い人間関係の中での修羅場のスリリングさと、人間関係の交錯ぶりが面白かったです。

 しかし、言い争いがただ起こるというよりは、彼の人間性に問題があろうとも、妻が亡くなった理由をどこまで彼に引き受けさせることが適当か、という問いがそこにはあるように思えました。また、そういう俗世間から離れた山荘での生活や生き方に対する倫理的な視点からの検討もありました。

 それでも、でんでん演じる義父のやり切れなさ、無念さには胸を打たれるものがあります。


 作・演出 蓬莱竜太
 出演 古山憲太郎 津村知与支 小椋毅 西條義将 生越千晴 今藤洋子 伊東沙保 でんでん
 1月31日昼 東京芸術劇場 シアターイースト
posted by 行き先不詳 at 19:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月25日

「プルートウ PULUTO」

 浦沢直樹原作の同名マンガの舞台化。ただ、そのことよりかは、ダンスを取り入れた舞台化作品ということの興味深さと、というか、それ以上に、森山未來が文化交流使としてイスラエルで1年間活動していた、そこからの復帰作ということでの注目度も高い公演です。

 私は、原作は1巻を読んで、続きはそのうちといってるうちにそのままになってしまってて、まぁ、今回面白かったら読むのを再開するのも一興かなくらいに考えていましたが、先に読んでおいたほうがよかったとは少し後悔してるところでもあります。

 舞台としては、かなりいろんな要素を盛り込んでて、ダンスだけでなくて、映像だとかプロジェクション・マッピング、舞台美術にしても、すべてが見所になっていて、またそれらをどう見せるかということの意識の高さが感じられる作品です。随所に圧倒されました。

 一方で、ストーリーの面白さに没入させるには至らないようにも感じられました。それはよくも悪くもで、観ていることに自覚的にさせるという意味では、それでいいのかもしれないですけど。とにかく、一見の価値どころではなかったです。


原作 浦沢直樹×手塚治虫
上演台本 谷賢一
演出・振付 シディ・ラルビ・シェルカウイ
出演 森山未來 永作博美 柄本 明 吉見一豊 松重 豊 寺脇康文 ほか
1月24日夜 シアターコクーン
posted by 行き先不詳 at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月18日

「96時間/レクイエム」

 シリーズのラストになるらしい3作目。
 1作目がかなり好きで、スピード感あるアクションと直線的に行動するというか、潔いくらいの暴走ぶりがシンプルに面白くて最高でした。

 本作では、主人公のブライアン・ミルズが罠にはめられて、警察に追われます。元妻が殺されてしまい、その疑いをかけられ、警察から逃れながら真犯人を捜すことになります。

 警察で捜査の指揮を執る警部をフォレスト・ウィテカーが演じていますが、洞察力があって、こちらの頭脳対決は今回の見所のひとつ。それだけに、もっと活躍する場面が観たいくらいにいいキャラでした。

 アクションでは、カットの切り替えがめまぐるしい早さで、逆にアクションが堪能できないと感じさせるところがあったかなと。それに、シリーズものになると仕方がないですが、無類の強さを発揮するのが分かってるので、ピンチに感じさせずスリルがない嫌いがあるかと思います。それと、あんなに暴走して、どう落とし前をつけるんだろうと思ったら、特に問題ないことになってるっぽかった…。

 もちろん、それでもアクションシーンは楽しいですし、特に、エレベーターシャフトに車を落とすところとか、終盤で飛行機の離陸を阻止しようとするところがアガりました。

 2作目、3作目で監督が変わっている(オリヴィエ・メガトン)ということの影響はよく分かりませんが、1作目のみピエール・モレルで、1作目が断トツに面白いことを考えると…。
posted by 行き先不詳 at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画・DVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月12日

PARCO PRODUCE「いやおうなしに」

 面影ラッキーホールというバンドの既存の曲を、そのゲスでリアルで物語性の強い歌詞をつなげて演劇に仕上げた舞台。“歌謡ファンク喜劇”なんていう言葉もチラシにはありました。歌謡ショーのようでもあり、ただ、芝居部分よりも歌詞によって、背景や設定が積み上がっていくので、ミュージカルとはまた違った音楽劇となっているのが珍しく感じられました。

 海老名市のワンコインホルモン丼店が舞台の中心となってますが、登場人物は屈折した心情を抱えていたりして、過去の経緯や背景は複雑でドロドロだったりします。にも関わらず、ポジティブでもあるし、楽曲にパワーがあって、楽しい作品となっていました。

 それでも、キャスティングを頼りに、内容の方向性も知らずに来た観客には(私も似たようなもので、面影ラッキーホールは、名前を知ってはいたけれど、くらいでしたし)、戸惑うところもあったのではないかと想像しました。それから、小泉今日子はまだしも、高畑充希が、なかなかチャレンジングな役どころだなということで、今後の注目度が上がりました。


脚本 福原充則
演出 河原雅彦
出演 古田新太 小泉今日子 高畑充希 三宅弘城 高田聖子 山中崇 政岡泰志 駒木根隆介 三浦俊輔 高山のえみ 田口トモロヲ
1月11日昼 KAAT神奈川芸術劇場
posted by 行き先不詳 at 18:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする